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本稿は、新しい言葉、Market-centering(市場主軸戦略)を経営者の用語のなかへ導入する。しかも、もっと重要なことは、経営のやり方に新しいコンセプトを導入した点である。生産とかその他の企業機能を軸にして会社活動の組織をつくるのではなくて、目標として決めた市場を軸にして組織をつくろうとしている会社があらわれたことは、経営の発想法における―大進歩であろう――ちょうど、アルフレッド・スローンの分権制の理念やプロクター&ギャンブル社(P&G社)のブランド・マネジャー制に匹敵するほどの意義をもつものだ、と考える論者もいるくらいである。
本稿は、市場主軸戦略を全般的にしろ部分的にしろ採用したいと考える会社の立場から、この戦略を分析する。まず、著者はいくつかの一流会社が現にこれを実施に移しつつある仕方を述べる。つぎに、市場主軸戦略の採用にとって有利な条件を検討して、この変革を選ぶとした場合、経営者のとるべき手順を述べる。最後に、市場を主軸に組織された企業の活動上の特長を要約して、企業成長にこのコンセプトがどれだけ大切かを論じている。
1960年代を通じて、市場指向(market orientation)が支配的な企業コンセプトであった。だから、その後10年を経たいま、顧客ニーズがつねに第一に考えられるような組織づくりに踏み出した会社があまり見られないのは、不思議というほかない。
ほとんどの会社では、部門の分け方が依然として、地域別に決められ、製品を中心に組織され、あるいは生産技術を売るための構造になっている。ごく少数の会社において、つぎの2点が理解されるようになったのも、ここ数年来のことにすぎない。
□ 利益を伴う企業成長の手段としては結局のところ、市場指向に代わるものは何もない。
□ 市場指向を確認するための唯一の方法は、主要市場が中心となって、それを軸に部門がつくられるといった、会社の組織構造の統合である。
2、3の先発企業は、製品や生産技術にではなくて、市場ニーズに合わせた組織構造をつくって成長の道を歩みつつある。
IBMのデータ処理部門は、主要市場、例えば病院のような公共機関、スーパーマーケットのような小売業別に、部門が分けられている。複写機を売るゼロックス・インフォメーション・システム・グループは、地理的な営業部の分け方を変えて、産業別に縦割りした営業部門になっている。ゼネラル・フーヅ(GF)は、市場を標的にした組織を採用した。科学技術が売り物で、まさに製品指向であるべき会社にしてさえも、徐々に、製品指向に市場指向を重ねる会社があらわれてきた。例えば、ヒューレット・パッカードは電子部品マーケティングにおいて、電気製品製造市場だけを相手にする販売サービス・グループ、宇宙用機器市場だけを相手にするグループ、通信機器市場だけのグループ、輸送機器市場だけのグループをつくった。
以上のほかにも、市場を指向した部門の分け方をしつつある会社がないわけではない。ミードでは、かなり幅広い市場クラスターがつくられて、住宅建築とその内装、教育、余暇の各分野別の顧客ニーズを満たそうとしている。PPGインダストリーズは、製品のペイント、セラミックス、ガラスのマーケティングを、住宅関連プロフィット・センターの手で体系化することを検討中である。そのセンターの製品ミックスは、図1のようなパターンに似たものになるはずである。モンサントはすでに、防火センターの組織をつくり、モンサントの製品のうち火災に安全な製品をここにひとまとめにして、市場別にグループ分けしている。そのグループ分けは、建築、輸送、衣料、インテリア製品である。レブロンは「会社をできるだけ小さな部分に分けよう」と努めている。6つもの自主的プロフィット・センターがつくられつつあって、それぞれはひとつの市場セグメントを相手にするように設計されている。




