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ちょっと目には、垂直統合は有効な戦略のように見える。経営者はこの戦略の実行によって、取引コストが下がり、必要な資材が確保でき、社内の調整も改善され、他の部門の技術上の優位性も利用できるようになると考えるかもしれない。
しかし、著者は1649の製造および加工業の事業の分析から、経営者の想定するようなメリットが得られるケースは少なく、プラスよりもマイナスのほうが大きいと述べている。垂直統合を実行するためには、統合する部門へかなりの資金をそそぎこむ必要があるから、もし合併からはコストダウンだけでなく必要なだけの保証が得られないかぎり、垂直統合戦略は実行に値しないと思われる。
本稿では、垂直統合戦略が成功するにはどんな条件が必要か、調査データをもとに明らかにしている。
垂直統合しているか、していないかによって、事業の業績が大きく変わる可能性がある。適切な垂直統合は、企業が生き残るためにはぜひとも必要だと主張する人もいるが、垂直統合のやりすぎは業績の悪化をまねくという人もいる。垂直統合戦略が採用された理由がわかる実例や、その成功例、失敗例はいくらでもあるが、次にそれらをいくつかあげる。
□ 1981年の中ごろに、デュポンは73億ドルでコノコ社を買収した。デュポンの会長のエドワード・ジェファーソンは、「コノコを吸収合併したことによって、ハイドロカーボン原料の入手についての心配がなくなったし、今後エネルギーとハイドロカーボンの価格が変動しても、その影響を受けることも少ないだろう(1)」と語っている。
□ 1970年代の中ごろまでは、IC(集積回路)のメーカーと、それを使う電子機器メーカーは、お互い同士熱心に垂直統合しあっていた。テキサス・インスツルメンツは、電卓、時計などの事業を吸収するかたちで川下型統合を進めていたし、電卓分野の初期のリーダー企業であったボウマーは、川上型の統合をめざし、自らの手でICの生産を行なおうと必死の努力を続けていた(しかし、この努力も結局は失敗に終わり、ボウマーは電卓業界から撤退してしまった)。
別の電卓メーカーのコモドール社の社長は、川上型統合は必要でもないし、望ましいものでもないとして、次のように述べている。「ICの仕入れに金がかかっても、それはやむをえない。それよりも好きなときに、あるテクノロジーを採用したり、捨てたりできる立場を維持することのほうが重要だ(2)」。
□ アメリカの自動車業界が低迷している原因の一部は、垂直統合のやりすぎにあるという人もいる。例えば、ロバート H. ヘイズとウィリアム J. アバナシーは、「経営者は明白な短期的収益増に目がくらんで川上型統合を進めてしまい、将来の革新的な方向づけを策定する能力を自ら限定してしまうケースが多い(3)」と述べている。
これらの例が示すように、垂直統合は大量の経営資源の動員が必要になることもあるし、やり方によっては大企業の命運さえも左右することがある。比較的規模の小さい事業の経営者も、ある種の原料、部品、製品、サービスについて「作るか、買うか」、「自社で使うか、他社へ売るか」の選択に迫られることが多い。例えば、自社内に運送部門を持つか、あるいは社外の運送業者を利用すべきなのか、規模の小さなスーパーマーケットはそのチェーン店がどれくらいの数になったら、自社倉庫を持つ力がついたといえるのだろうか、クールス(小さなビールメーカー)にとっての賢明な戦略とは、ビンもカンも全部自社で生産するやり方なのか、それともアンヒューザー・ブッシュのように、必要な分の半分だけを社外の供給業者に頼るやり方なのか、といった決定である。
これらの決定は、企業もしくは事業活動の垂直統合度に影響を及ぼすものである。もちろん、これらの決定以外にも垂直統合に関して経営者の選ぶ打ち手は数えきれないほどあるが、それらはみんな事業の垂直統合戦略を構成するものである。



