多くの急成長型ベンチャー・ビジネスに共通する一大特質は、キャッシュ・フローの管理、生産予定計画の確立といった課題を前にしたときに発生する混乱症状である。この手の企業のオーナーというものは目の前の火の粉をふりはらうのに追われるあまり、とかくマーケティング活動を展開する外部の世界の動向を見失ってしまいがちなものである。

 企業は4段階にわたるマーケティング発展プロセスをへて成長していく――これが本稿執筆陣が急成長を続けるハイテック型メーカーのトップとのインタビューを通じてはじきだした結論である。まず、第1期では創業経営者が友人・知己を頼りに特注製品の販売にあたる。ついで市場の拡大に努め、的確な社内コミュニケーションの確立をめざし、多角化の道をすすんでいかなければいけない。以後の各成長段階を鮮やかに通過してみせる企業というものは、組織的にしっかりしたマーケティング部門を作りあげ、そこを通じて販売、調査などの機能を円滑に管理しているものなのである。

 有効なマーケティング組織を確立するカギは、どこにあるのか。

 進化論によれば、有機体は環境の変化に対応できてこそ初めて繁栄できるという。企業とて、変転する外部環境への対応法を変えてこそ成功への道が開けるはずである。

 企業がいざ外部の世界との調整に大わらわにならなければいけない事態になったときに役立つのは、マーケティング機能である。それだけに、成長過程にある企業がマーケティング組織を段階に応じて進化させておかないと、一段成長するたびに、いや応なく血の涙を流さなければならなくなる。

 本稿では、事業にとって重要なマーケティング上の様々な課題を確認したうえで、そこから生ずる重要問題の解決法を示唆しようと思う。

 ところで、トップたるものは、成長が引き起こした新しい事態に単純に反応したりせず、むしろ企業運営が成功裏にすすんでいる間にこそ、次の段階へのプランニングを確立するうえでリーダーシップを発揮すべし、とこれを今回の分析をすすめるうえでの大前提としたいのである。

 1つの成長段階では申し分のなかったマーケティング組織、戦略が、次の段階へすすむ過程で重荷に転換してしまうといった事態も、なきにしもあらずである。

 表1に例示してあるように、事業が急成長するとき4つの進化段階を通過していくことになる。各段階においてのマーケティング努力がそれなりの効果を発揮するまでには、ある程度の時間がかかるもので、その間の調整に歪みが生まれたりすると、結果的に各段階における成長が鈍化してしまう。

第1段階:創業者型マーケティング

 急成長するハイテック型企業というものは、往々にして大企業から抜け出して自分の事業を興した人物が創業者になるものである。この手の創業型事業家には技術知識は金庫にどっさり、改良アイデアもたっぷり積み立てているものの、マーケティング上の経験はすっからかん、というタイプが比較的多い。