経済の拡大にとってITは重要ではなかった

「コンピュータ時代とはいうものの、IT(情報技術)が生産性向上に貢献した統計的根拠はない」

 1987年、ノーベル経済学賞受賞学者であるロバート・ソロー MIT(マサチューセッツ工科大学)教授が述べたこの言葉は、「生産性パラドックス」として広く知れわたっている。

 しかしながら、当時は労働生産性が急激に向上していた。そして、95年から2000年にかけては、過去20年間に比べて2倍の上昇率を示した。また、同時期にアメリカ企業はIT投資率の割合をほぼ倍増させた。結果は、魅力的なものだった。IT投資は大きな利益を生み出したのだ。

 とはいえ、結論を急いではいけない。2001年10月に発表されたマッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)が行った「90年代後半における生産性急上昇の原因を検証する研究」(U.S. Productivity Growth, 1995-2000)では、ITと生産性向上との間に明確な関係は見出せなかった。

 たしかに、ITが生産性に対して大きなインパクトをもたらした産業部門もあるが、その他の部門では実質的には何の効果ももたらさなかったとMGIのリポートは結論づけ、ITは経済の拡大において最も重要な要素ではなかったとしている。