市場は微妙なシグナルを発している

 2000年春、ナスダックが史上最悪の下げ相場へと向かい始めた時、数え切れないほど多くのエグゼクティブがそのシグナルを見逃してしまった。

 冷静に危機に備えなければならなかったにもかかわらず、低い失業率と健全なGDP成長率に惑わされ、増産と拡大に走ってしまった。彼らには見えていなかったが、株式市場はマイナス成長を予期していた。その警告に耳を傾けてさえいればよかったのだが――。

 市況を見誤ったエグゼクティブ全員が、決定的なサイン、つまり生産や在庫管理から資産運用やマーケティングに至るすべての事柄について、意思決定の指針となりうるシグナルを見逃していた。もちろん、ほとんどのエグゼクティブは、市況が経済全般の先行指標であることを知っている。しかし、とらえ難い予兆までも教えてくれるとは考えてはいなかったようだ。

 株式市場の長期的な周期と、個々の産業セクターが示す固有サイクルの関係について考えてみよう。

 たとえば、市場はピークを迎えているが、景気循環の拡大後期にある場合、ウォールストリートの資産運用担当者は景気が後退することを見越して守勢に転じ、不況知らずといわれるヘルスケア、あるいは薬品や化粧品、食品などあまり大きく変動しない消費財分野に資金を移動し始める。