サマリー:AIの活用がビジネスでも着実に広がっているが、この先、産業構造そのものを再構築する可能性もあるAI革命に、日本企業はどう向き合うべきなのか。AIのポテンシャルを十分に引き出せている企業が少ない中で、まず着手すべきこととは。

世界的にビジネスでの活用が広がるAI。だが、産業やビジネスのあり方を抜本的に変えるといわれるAIのポテンシャルを、十分に引き出せている日本企業はまだ限られているようだ。産業構造そのものを再構築する可能性もあるAI革命に、日本企業はどう向き合うべきか。『産業融合 インテリジェンスから解く分断・統合・再興』(ダイヤモンド社)を上梓したPwCコンサルティングのシンクタンク、PwC Intelligenceのシニアエコノミストの水上啓氏と伊藤篤氏、PwC Japanグループのチーフ・AI・オフィサーを務めるPwCコンサルティングのパートナーの藤川琢哉氏に聞いた。

AIが「できること」の3割しかやらせていない現実

――ビジネスにおけるAIの活用は、日本でもかなり広がっています。日本企業における生成AIの活用状況とその課題をどのようにご覧になっていますか。

藤川 PwCコンサルティングは2023年から毎年「生成AIに関する実態調査」を行っています。2026年春に実施した調査では、日本のほか、米国、中国、英国、ドイツ、韓国の計6カ国を調査対象とし、世界における生成AI活用の潮流の中での日本の現在地を多角的に調査・分析しました。

PwC Japanグループ
チーフ・AI・オフィサー
PwCコンサルティング
パートナー
藤川琢哉

 この調査で明らかになったのは、日本は生成AI活用の推進度こそ平均的であるものの、効果創出の水準が他国に比べて低いということです(図表1)。高い効果を上げている国の企業は、生成AIを単なる効率化ツールではなく、業務や事業構造の抜本的改革の手段と捉え、業務プロセスへの本格的な組み込み、ガバナンス体制の整備や、従業員への価値還元に取り組んでいます。一方、日本ではそうした先進的な取り組みを実現している企業の割合が少なく、他国との成果の差となって表れています。

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図表1 生成AIの活用度と効果の日米比較

水上 生成AIが持つポテンシャルを十分に活かしきれていないことも、活用度合いの差につながっているのではないでしょうか。ソフトウェア開発やデータ分析などの領域では、理論上生成AIはほぼすべてで適用できるのに対して、実際の活用は遠く及びません。また、AIを十分に活用できている層とそうでない層の格差も指摘されており、AIの成果は、導入の有無だけでなく、高度な業務に使い込めるかが焦点であり、現状では本来使えるはずの能力を十分に引き出せていないように見えます。

 先ほど藤川が示した調査でも、日本企業でAIの効果が期待以上だったのは56%であり、生成AIの活用の効果をより感じやすい高度なタスクへの適用が遅れている可能性があります。