たいていのマネジャーは、費用削減の必要に迫られても、間接費の分野にはなかなか手をつけようとしない。その検討に時間がかかるうえ、それほどまでにしても、たいした成果があがらないからだ。よくあることだが、たとえ、この分野でのサービスの削減が実現されたとしても、いったん危機が去ると、すぐにサービスが復活されて元のモクアミになってしまう。そういった間接費の削減が、もともと、構造的な削減ではないからである。

 本稿で著者は、いくつかの欧米の企業が、間接費を恒久的に削減するために採用している1つの方式を紹介する。これらの企業の大半は、この方式のおかげで、現に15%ないし30%の間接費の削減に成功している。この方式でとくに重要なのは、サービスを提供する側であると受ける側であるとを問わず、マネジャー全員が、自分たちが思いついた各種の経費節減/サービス削減法のランキングについて同意する、という手続きをふむことである。それらの方法のどれを実施に移すかは、トップマネジメントが決定する。

 このように、この方式には、最高経営責任者や役員などすべてのマネジメント階層が等しく参画する。例えば、数人の役員が、長い場合で最高4ヵ月間も費やして会社全体にこの方式を指導することになる。この方式は軽々しく採り入れるべきではないけれども、系統的に実施するならば、多大の成果があがる可能性がある、と著者は指摘している。

 不景気の深刻化と相も変わらぬインフレの進行で、多くの企業が、ひどい金づまりと利益の低下に苦しんでいる。なんとか生きのびようとして、ぎりぎりのところまで費用の切詰めに努力する企業が、ますます増えてきた。こうして、在庫の一掃と、材料費、直接労務費の総力をあげての削減が、いまや、多くの企業にとって、至上命令になっている。

 ところが、どんな深刻な危機に際しても費用削減のナタが効果的にふるわれずにいる一大費用分野がある――間接費(overhead cost)である。たいていの場合、その理由の説明は簡単だ――これまでにも何度か間接費を切り詰めようとしたが、結局、ほんのちょっぴりしか節約が実現しなかったし、短時日のうちに元のモクアミになってしまったからだというのである。

 このことは、別段異とするには足らない。平均的な企業では、間接費の大部分は、相互に関係のない何千ものこまごまとした活動から成り立っている。間接費を徹底的に切り詰めようとしたら、それらの活動をそれ自体として評価したり、他の活動との関連で評価しなければならない。このため、トップマネジメントはついつい安易な道を選んでしまう。こうして、次のような命令が下されることになるのだ――いわく、「間接費を、おしなべて10%切り詰めよ!」、「今年の予算は、昨年並みに抑えよ!」

 従業員が、そういったやり方を、不公正で手前勝手だと受けとったとしても無理はない――事実、そのとおりなのだから。時には、最近雇用されたばかりの従業員が少数ずつ各部門でレイオフされることもある。時には、従業員の勤務評定が手っ取り早く実施され、それに基づいて各階層の従業員がおしなべて削減されることもある。が、いずれの場合にも、それらの従業員が保持していた職務は遂行されなければならない。だとすれば、"首切りを免れた"従業員が負担過重になり、欲求不満に陥り、士気を喪失するのは当然である。結果として、せっかくの人減らしも所期の成果をあげられない、という仕儀になる。

 経営者は通例、切り詰めたいと思う活動を特定する場合に、例えば教育訓練とか、広告とか、超勤手当とかいったごく自由に切り盛りできる"金額の大きい"2、3の分野に執着して、他分野のちょっとした機会をないがしろにしがちである。しかも、ほとんどの場合、一時の熱がさめると、切り詰められた分がすぐに復活されるので節減は結局、つかの間の現象に終わってしまう。したがって、大方の気のきいたマネジャーが、"収支"改善の道を間接費以外の費用に求める傾向があるのも無理からぬことと言えるのである。

 とはいうものの、最近になって、いっこうに効果のあがらない間接費対策のなかにあって、若干のめざましい例外が現われてきた。費用面でまかりまちがえば危機的状況に追い込まれかねなかった欧米の企業20社ほどが、間接費VA(value analysis=価値分析)といわれる手法を利用して、過去3年間に、(広義の)間接費を15~30%削減するのに成功したのだ。保険会社や銀行をも含むこれらの企業が実現した節減は、金額にして年間100万ドル弱から1億ドルに達する。これらの間接費削減は構造的なものであり、今後とも、この節減は持続するものとみられる。

 間接費VAという概念は、さほど込み入ったものではない。伝統的なVAの場合には、研究チームがまず最初に、特定の製品ないしは品目が満たすべき達成基準を決定し、次いで、よりすぐれた、より低費用の設計を開発するなり、工学的手法を工夫するなりして、要求される品質水準を犠牲にすることなく、より経済的に、同一の成果をあげようとする。