-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
アメリカのマスコミは、アメリカが日本や西独との競争に勝ち抜くためには、勤労者の生産性の向上を図るべきだという点を、しきりに報道している。だが、マネジャーの生産性という問題には、ほとんど触れていない。実際には、QC(品質管理)の導入よりはるか以前に、このことは分かっていたのだが、いまだに未解決のままになっている。その理由は、本稿の両著者によると、対症療法の多くは表面的な症状、例えば、長時間の会議、不要な電話、部下や秘書に任せられる仕事といった面にのみ向けられている。
だが、このような症状の陰にひそんでいる病気、すなわち、"革新的な活動と取り組む不安"こそが問題なのだという。この点について両著者はつぎのことを発見した。すなわち、管理職の3つの職務――日常活動の組織化、迫られる業績改善、部下の生産性の向上は、多大の不安をもたらす。そこで、多くのマネジャーは、すでによく知っている日常的な業務分野に閉じ込もろうとする。本稿は、組織的環境がどのようにしてマネジャーを非生産的にさせるのか、そしてそのようなワナにはまらないようにするには、どうしたらよいか、その具体的戦略を説く。
社長から電話があって、「ユニークな資格を持つ君にとくに頼みたい仕事があるが、やってみる気はないか」と聞かれたとする。この仕事については、社長に直接報告すると同時に、なんらかの重要な戦略的意思決定に参加することになる。また、興味深い出張旅行に出かける機会もあろう。要するに、その仕事を通じて会社に貴重な貢献をすると同時に、自分自身も大きく成長するチャンスをつかむことになろう。
このはなしには、ひとつだけ落し穴がある。というのは、この仕事はパートタイムで、1週のうち約1日かかる見込みだから、残りの4日間で現在やっている仕事を遂行しなければならない。「それでもあなたは、社長からのはなしを引き受けますか」。
過去2、3年間にわたって、私たちはこの仮定の質問を何百人かのマネジャーにぶつけてみた。その多くは、いまの仕事でさえ十分にやるだけの時間がないと考えている人たちだった。それでも99%の人がその仕事を引き受けると答えた。ということは、裏を返せば、有力な動機さえあれば、日常の業務に支障なく、毎週8~10時間分の活動時間を工面できるということを認めたのだ。
このように、大多数のマネジャーは現在もっている仕事のやり方を改善できるのだから、毎週1日分の自由時間をつくって、それを重要問題の処理に充当すべきではなかろうか。というのは、私たちが調査した人びとがマネジャーの典型的タイプだとしたら、その多くは時間の管理を十分に行なっていないという結果がでたのだから。
つまり、時間を調整して重要事項を優先的に処理すべきだということは、マネジャー自身分かっていても、実際にはそれほど急を要さない他の業務に忙殺されているように見受けられる。それというのも、その背景には、時間を有効に使っていないと知っていても、従来の方法を変えられないという事情が潜んでいる。なぜそうなのか。私たちの観察によると、多くの場合マネジャーは、仕事に伴う不安感を避けたり、逃れようとして、時間の浪費にすぎない非生産的な業務を続けている。
マネジャーの仕事には不安が付いてまわるから、激しい心理的苦痛から逃れるための息抜きが必要になってくる。その場合、マネジャーがよく使う効果的な手は、不安の発生源に直接アタックすることだ。例えば、近く開かれる会議が気がかりならば、議事についてさらに詳しい情報を集めたり、主な出席者とともに事前に議事内容をテストしてみる、といったことが考えられる。
しかし、ほとんどすべてのマネジャーは、しばしば意識しないで、さまざまな生産につながらない心理的メカニズム、例えば理論づけ、非難、否定といった方法で、仕事関連の不安からの脱出を図る。このような不安脱出対策としてのメカニズムの中で最も一般的でしかも被害の大きいものは、"多忙病"である。
いわば、マネジャーの本来の厳しい仕事と比べてはるかに生産性は低いが、不安の少ない時間浪費活動への逃避がそれである(1)。



