-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
生成AIアシスタントを、単なる効率化ツールで終わらせない――総合建設会社の大林組が、AI活用を起点とした業務プロセス変革を加速させている。2026年3月にグローバル経営戦略室へ移管された新生BPR部は、以前から進めてきた業務プロセス変革をさらに深化させ、「AIを前提とする」プロセスとデータの再設計に取り組む。その実践の場として、本社内に「AI共創ガレージ」を開設。社内各部門が持ち込む業務課題に向き合い、部門担当者とともに解決策を形にしていく取り組みを始めている。目指すのは、AI時代にふさわしい業務プロセスへの転換だ。同社BPR部長の中嶋潤氏、同部AI共創課長の中林拓馬氏と、大林組の取り組みを支援するPwCコンサルティング パートナー執行役員の木村安孝氏が、新生BPR部のミッションと、AIを起点とした変革の現在地を語り合った。
「AIの活用を前提に、業務プロセスそのものを再設計する」新生BPR部
木村 2024年に、「新しい仕事のスタイル」というテーマで大林組のデジタル変革について対談をさせていただきました。その後、生成AIやAIエージェントが登場して、建設業も例外なく大きな変化の中にいると思います。大林組は、BPR部という業界でも独自の部署を設けていますが、2026年3月に技術研究所のAIチームと合流する形でグローバル経営戦略室へ移管され、新生BPR部が誕生しました。佐藤社長(大林組代表取締役社長兼CEOの佐藤俊美氏、以下同)の発信もあったと聞いています。
中嶋 2025年の春頃、社長が私に「潮目が変わった」と話したことがありました。社長は以前より生成AIには注目していましたが、AIエージェントの出現を受け、業務での本格的な活用の可能性が見えてきた。そんな感覚を「潮目」という言葉で表現したのでしょう。生成AIの裏側の仕組みや、業務プロセスに組み込むことで価値が出ることなど、対話を重ねる中で社長の本気度を感じました。社長には、AIの高度活用を推進する前段に、業務プロセス変革、データ整備が必須であることをしっかりと理解してもらっています。そのうえで、社内の大きな会議などで発信してくれていることは大変ありがたい。その付託に応えなければならないプレッシャーも相当キツいですが。
グローバル経営戦略室
BPR部長
中嶋 潤氏
木村 企業変革においては、経営層みずから発信していくトップダウンアプローチと、社員の一人ひとりが意識を変えて当事者として取り組んでいくボトムアップアプローチが必要と考えます。変革のため経営層みずから発信していく姿に、大林組の強い意志を感じます。新生BPR部立ち上げの背景とミッションを教えていただけますでしょうか。
中嶋 生成AIは、文書作成など手元作業の効率化に期待が集まりますが、より大きな果実を得るには、生成AIを業務プロセスへ組み込むことが必須です。その前段で業務プロセスの見直しが不可欠との判断に基づき、約6年前から業務プロセス変革を担任している私たちBPR部の管掌とされたと受け止めています。BPR部のミッションを一口に言うと「AIの活用を前提に、大林組の業務プロセスを再設計する」ということになります(図表1)。
図表1 大林組のBPR部の位置づけ
木村 今後、各企業で「AIを前提に」業務や組織、ビジネスのあり方が変わっていくと考えています。特に建設業は他産業に比べて高齢化と人手不足が深刻です。総合建設会社においても今後数年で多くのベテラン社員が退職されていく実態もあります。そういった中で、ベテランのナレッジ継承や徹底的な生産性向上は業界全体の課題であり、急務となっており、私たちも「AI BPR」というテーマでご支援することが増えています。
中嶋 BPR活動では、以前から「生産性の向上」とともに、「組織知の最大化」を活動目的として掲げてきました。AI活用が前提となったいま、あらためて、ベテラン社員を中心として、暗黙知を形式知化し、組織知として集約・蓄積し、活用できる環境を整えることが必須です。それらの組織知の基盤と、業務プロセスが整ってこそAIの活用が最大化されると考えています。
木村 非常に大切な視点です。AI以前に遡りますが、もともと中嶋さんには、ツールそのものよりも、それを使って業務をいかに変革するかという視点が強くありました。それがPwCコンサルティングの考え方と共鳴したことで、両社のパートナーシップにつながりました。代表的な成果の一つが、2018年から始まったデジタル変革の取り組みで、順次社内でリリースされた業務基盤「BizXBase」(ビズ・エックス・ベース)です。
中嶋 Salesforce上に構築したBizXBaseは、営業から生産、アフターサービスまでの業務プロセスを一気通貫で支えます。段階的な利用開始から5年余りが経過し、顧客や案件、竣工建物などさまざまな切り口で情報を整理・活用できる環境が整いつつあります。