「AI共創ガレージ」を開設、情報発信と体験を強化

中林 一般に、新しいツールを導入したものの、使われないというケースは少なくないと思います。早い段階でプロトタイプを見せてファンになってもらえば、そうした事態は回避できるでしょう。当社のAI活用の推進においても、強く意識しているポイントです。

大林組
グローバル経営戦略室
BPR部 AI共創課長
中林拓馬

 ニーズ(要求)とシーズ(技術)という言葉がありますが、シーズ起点の取り組みではなかなかユーザー部門を巻き込めない。ニーズに耳を傾け、目に見えるものを提供し、体験してもらうことが大切です(写真)。

写真 大林組で行われたAIワークショップの様子

木村 当社も実物に触れること、AI体験を重視しています。そこで、2023年に「Industry Solution Garage(インダストリー・ソリューション・ガレージ)」を開設し、これまで多くのクライアント企業の訪問がありましたが、中嶋さんと中林さんには、2025年秋に来ていただきました。

中林 その時、「こういうのを当社でもやりたい」と話したのを覚えています。それで、本社内に「AI共創ガレージ」を設置することを提案しました。さまざまな部門で働く社員が、困り事などを気軽に持ち込める場所にしたい。まずは業務課題を共有していただき、BPR部目線で改善案を検討し、そこに必要であればAI導入を提案するのがBPR部の仕事です。何でもいいから、私たちに相談してもらいたいですね。そんな思いもあって、AI共創ガレージは社員の行き来が多い場所に設置しました。

木村 プロトタイプによるユーザー体験により、少しずつ自分事として考えてくれる人たちが増えていきます。ただし、AI活用の文化が醸成されていくと、必ずと言っていいほどぶつかる壁があります。「必要なデータが、アクセスできる場所に、必要な形で蓄積されていない」という課題です。

中嶋 プロトタイプにより具体的なイメージを持てたからこそ、現状では不足しているデータに対する気づきを得られます。これが大事です。教科書的に、「○○が足りない」と騒ぎ立てても、業務担当者に内発的な動機づけを促すことは難しい。やはり、当事者意識を持ち、具体的なユースケースの中で必要なデータを設計・整備していくことが必要なのだと考えます。

中林 当社でもデータ整備はインフラの整備などをはじめ危機感を持って進めておりますが、既存データは膨大ですし、日々新たなデータが生成されます。大量のデータをすべてきれいに整理するのは現実的ではありませんし、のちの活用をイメージせずに半ば無作為に蓄積されたデータすべてに価値があるわけではありません。AIの発展が著しいこともあり、ユーザー部門からはデータの取捨選択までAIがやってくれるのだろうと言われることも多いのですが、残念ながらここの自動化は容易ではありませんし、人間の作業であり続けるべきだとも考えています。どのデータが重要であるかはその部門にしかわからないため、自身でデータの取捨選択をする必要があります。そのためにも、各部門にデータマネジャーのような役割を置くなどの施策を検討すべきではないかと思っています。

木村 最後に、BPR部としては今後どのような形で大林組のビジネスに貢献していきたいと考えていますか。

中嶋 「ツールありき」ではなく、業務プロセス変革にフォーカスする姿勢には今後もこだわります。社長からも「AI活用をきっかけに、大林組の業務プロセスとデータの見直しを進めてほしい」と言われています。そこに向けて、BPR部の活動をさらに強化しAI時代にふさわしい業務プロセスの再設計を目指していきます。

 PwCコンサルティングは、グローバルの最新技術動向や、各業界においてさまざまなテーマで企業変革を支援してきた経験・知見を提供してくれます。困った時に相談すると、そのテーマの専門家を紹介してくれるなど、テーマや部門を横断した総合的な支援をしてもらえていると感じます。引き続き、企業変革という目線で力を貸していただきたいと思っています。

※次回、建築本部 本部長室 リニューアル部とBPR部で進めている「ナレッジ継承AI」の取り組みを紹介する予定です。

顧客提供価値のさらなる向上を目指して
大林組 常務執行役員
グローバル経営戦略室長
富岡孝行

1988年に大林組に入社後、人事部を皮切りに
現場、財務、情報システム、大阪本店総務、
営業、営業企画・推進と幅広く経験。

2023年からグローバル経営戦略室長。

現在、グローバル経営戦略室配下の8部(含BPR部)と
コーポレート・コミュニケーション室、
秘書室、総務部を担当する。

 

 これまでBPR部は、デジタル変革プロジェクトチームを出発点に、仕事の進め方そのものを見直し、新しい業務スタイルを形にする取り組みを続けてきました。今回、そこにAIの力を加え、BPR部をグローバル経営戦略室の配下に設置しました。これは、大林組として業務変革を中期経営計画2022にひもづく経営課題として本気で進める、という意思表示です。

 AIが真価を発揮するために、私たちは、まず業務プロセスとデータの持ち方を見直し、「組織知」を整備することに着目しています。個人や部門に分散していた知見を、会社全体で共有できる形へと転換する。そのうえで、整備された組織知をAIがナレッジとして扱い、人とAIが自然に協働することで、業務の生産性と再現性を高めていくことを目指しています。

 中嶋さんには、その中心的な役割を期待しています。これまでの取り組みを通じて、システムを入れること自体が目的ではなく、仕事の流れを根本から見直すことが変革の本質である、という考え方を社内に浸透させてきました。今後は、AI技術者も加わった新しいBPR部として、各事業部門・本社部門との共創を通じて、より実践的な変革を進め、大林組の新しい仕事のスタイルを社内外に示していってほしいと思っています。

 こうした取り組みによる大林グループの事業基盤強化によって、社員一人ひとりがより能力を発揮できる環境が整い、顧客提供価値のさらなる向上につながることを、ひいては大林グループの企業価値の向上に資することを企図しています。BPR部には、その取り組みの先導役として大いに期待しています。

 

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