AIと協働する新しい仕事のスタイル
木村 AIエージェントは自分の隣にいる先輩・同僚・部下・秘書のような存在と考えますが、大林組のBPR活動にどのような影響を与えていますか。
中嶋 これまでのBPR活動を通じて、業務プロセスを整え、構造化されたデータが蓄積されてきたこともあって、AIを導入しやすい環境があると考えました。資料作成など手元作業の効率化といったAIの使い方は奨励したいと思いますが、BPR部として重視しているのはAIとの協働であり、AI活用を前提とする業務プロセス変革です。
木村 そこで、これまで構築してきた業務基盤BizXBaseに加え、フロントをMicrosoft 365 Copilotに集約することであらゆるデータにアクセスし、Microsoft Teams上のAIエージェントと対話しながら業務を進めていくやり方の検討およびプロトタイプによる概念実証の支援をさせていただきました。試作品では、BizXBaseに蓄積されたデータと法令情報や統合報告書などの外部データを活用して、修繕・リニューアル工事の候補となる建物や見込み案件をリストアップ。その後の訪問準備から訪問後の記録までを協業していくエージェントをつくりました(図表2)。
中嶋 当社のMicrosoft Teams上でAIエージェントと対話していくことで、業務が自然と進むように設計されており、「新しい業務スタイル2.0」の仮説を具現化できたと感じています。現在はそれを叩き台に、実運用に耐えられる技術検証を行っています。
図表2 2026年3月に構築したMicrosoft Teamsでやり取りができるAIエージェントの試作品イメージ
木村 まさに「新しい仕事のスタイル」の模索ですね。
中嶋 AIエージェントと組織知の関係についてもう少し補足すると、大林組の社員数が約1万人とすると、1万人の経験・知識があるということです。その1万人分の組織知を背景に持つAIエージェントと協働することができれば、人の仕事の質は大きく向上するはずです。まったく新しいアイデアが生み出されるかもしれません。
木村 AIによる課題解決、価値創出の可能性は大きいと思います。とはいえ、業界全体のすべての業務がすぐに変わっていくことは考えにくいため、早くからAIと協働する仕事のスタイルに変えていけた企業が競争優位性を持つことになると思います。
建設業・住宅業・エンジニアリング業界
パートナー執行役員
木村安孝氏
昨年、佐藤社長を訪問した際、マサチューセッツ工科大学(MIT)の「生成AIプロジェクトの95%が失敗に終わっている」という有名な調査レポートの話になりました。その時の佐藤社長の力強いお言葉が非常に印象的です。「それでも5%の企業はAIの活用に成功しているということ。大林組は、5%側に入らなければならない」と。
中嶋 その「5%」に競合企業がいたらどうするのか。また、生成AIの進展により人材に対する要件も変化していくことが想定され、社内でしっかり議論を深めたい。それがトップマネジメントの問題意識だと、私は理解しています。
木村 一方、現場へ目を移すと、必ずしも変革に前向きな人だけとはいえません。現在の業務のやり方を否定する要素が少なからずありますし、そもそも無関心な人もいます。トップダウンと同時に、いかに多くの人が自分事として取り組み、変化を受け入れられるようになるかが、もう一つのポイントになるかと思います。
中嶋 プロトタイプに触れ、社員がAIとの協働を体験することが大事だと思います。体験を通じて、「新しい業務像がわかった」「そのためには、いまのデータを見直す必要がある」と自分事として受け止める。そうした社員は、変革を前向きに考えてくれます。ユーザーを巻き込み、個々人の内発的な動機に働きかけることが非常に重要だと考えます。
私としては、これらの活動を「BPR2.0」と位置づけています。BPR活動のアップデートと言ってもいいでしょう。これまで継続的に推進してきた業務プロセス変革を、AIエージェントによって加速させたい。