企業広告は、パブリック・リレーションズや製品広告あるいはブランド広告と同列に論じられるものではなく、それらを超えて行なわれるものである。その狙いは、企業に対する永続的な好感を作り出し、CI(コーポレート・アイデンティティ)を確立するところにある。

 企業広告とて虚偽のイメージを長期間、維持することはできない。しかし、誤って形成された見解を正し、企業を世間に印象づけるという目的を達成することはできる。環境紛争その他の公共問題にまきこまれ批判のまとになりがちな企業にとって、企業キャンペーンは、信頼性を築きあげるのに有効な手段である。

 企業広告に関する著者の見解は、みずから実施した主要企業750社調査の結果にもとづいている。著者は、企業広告の実施にあたって判断のよりどころとなった理由を調査し、企業広告プログラムをスタートさせるかどうか決断しなくてはならない担当マネジャーの参考になるガイドラインを作成している。

 企業広告計画を始動するかどうかを決断するに際して、大半の企業は全社一致とはほど遠い状態にある。米国の代表的製造業500社についていえば、1980年には244社が企業広告計画を実施に移したが、残りの256社は計画を実行しなかった。つまり、過半数が中途で挫折したのである。

 敬遠する企業が少なくない企業広告を実行する企業があるのはなぜか。その決定のもとになる論理的あるいは非論理的基盤はどんなものなのか。

 本稿で私は、どんな企業や産業が企業広告を行なうのか、その理由は何か、企業広告が有益になるのはどんな条件のもとでなのかを論じるつもりである。引用する調査データは、私が実施した企業広告費調査(フォーチュン誌の製造業番付500社と非製造業番付250社対象)によっている(同調査の設計等に関する詳細は以下に掲げてある)。同調査以外は、多くの企業が企業広告を行なう際の経営要因をつぶさに観察した私の経験と知見によった。

調査・分析の概要

 1981年1月、フォーチュン誌製造業番付500社と非製造業300社の最高責任者に私は手紙を同封して質問票を送付した。私は小売業種からの回答を使用しなかったので、とりあげた非製造業の社数は250社に減った。回収率は、製造業44%、非製造業42%であった。

 回答のあった製造業221社のうち、102社が企業広告を実施していると答えており、82社は実施していない、37社が無回答という結果であった。回答した221社のうち、139社が一般の広告活動を実施していると答え、17社は実施していない、65社が無回答であった。

 企業広告について回答を寄せた小売企業のうちの7社は企業広告への支出費用に答えていず、そのため小売業から回答のあった11社を削除して分析した。非製造業の中の非小売業116社のうち73社が企業広告を実施していると答え、36社が実施していない、7社が無回答であった。この116社のうち85社は何らかの広告活動を行なっているが、16社はまったく広告活動を実施せず、15社は無回答であった。

 各企業が企業広告実施の決定をくだすにあたって用いるべき評価基準が何かを考える前に、どんな広告を企業広告と呼ぶか、をもっとつっこんで調べておこう。まず、公共意見広告と呼ばれるキャンペーンがある。信用確立のための広告もある。また、製品・サービスよりも企業そのものの目的のために広告媒体のスペースやタイムを購入したイメージ広告も企業広告とみなされる。企業広告には大きく分けて3種のカテゴリーがある。それは、主張あるいは提唱広告、財務関連すなわち株主対策プログラム、そして一般的な企業イメージ構築広告である。

 主張広告

 企業は、通常、訴訟や消費者運動をひき起こされる恐れがあると考えられることがらに対処して主張広告を実施する。ある企業が、ある論争で、自己の立場を明言し明示する場合、その利益は当の企業にもたらされるだけではなく、同時に公共的にも利益がある。なぜなら、(広告で詳述されることによって)そのことがらについてのより完全な評価が可能になるからである。もっとも、争点の提示より、はるかに広く一般に行なわれているのは、企業の代表者が考えを披瀝して注目を集めたり、あるいは真意がどこにあるかを証言したりするキャンペーンである。日常的テーマに遠い規制緩和、税法改正、新立法、または関税のような問題でさえ、確実に企業広告の範疇でとり扱うことができるだろう。

 財務関連広告

 この広告は潜在的な投資家の関心をかきたてることができる。企業はまさに星の数ほどあるから、そのすべてについて公正で平等な評価を確実にできる分析家はほとんどいない。ことに比較的小規模の企業についてそうである。企業分析家が、企業広告から新情報を得ることはほとんどないが、その広告を通して描かれる企業の横顔と、企業がそういう刺激的な行動に出たこと自体が彼らの思考に影響を与えるだろう。

 イメージ構築

 通常、企業はあるアイデンティティを確立したり、自社についての偏見を是正するためにイメージ広告を採用する。多様な側面をもつ大企業は、自社の一般イメージを単純化・明確化するためにイメージ広告を利用する。