10年前、市場での成功に得意になっていたアメリカのマネジャーにとって、商品の生産に関する問題は克服されたとする考えが一般的であった。いまや、世界の競争者の輝かしい成果によって、この自己満足は泡沫のごとく徹底的に吹きとばされてしまった。実際、アメリカの生産者は、世界的規模での競争のなかで自分の地位を守るためには、生産面における優位性を基盤として競争するための方法を学び直さなければならない。

 アメリカの生産者は、自動化された生産機械を強力な援軍として採用していったとき、ほとんどの場合、単位コストの低減と高い品質がフレキシビリティを犠牲にすることによってのみ得られることを発見した。このことは、流動生産あるいは大量生産形態をもつ業界の企業にとっては、有害な問題ではなかった。しかし、バッチ生産形態の生産者には、それは悪夢のようなものであった。彼らは、1つの作業から別の作業に迅速に機械を移行させる能力――彼らの生産システムのまさに本質そのもの――を放棄することによってしか、コストを抑えることができなかったのである。

 したがって、バッチ形態の生産者が、フレキシブルなコンピュータ化生産技術における近年の発展を、あたかも聖十字架の一部であるかのごとくに考えるのは、何ら不思議なことではない。しかし、彼らは、この設備を直ちに使えるようにしたいという焦りと興奮のあまり、それが生産システムの他の部分に引き起こす問題をとかく見過ごしがちである。著者が精力を傾けて扱っているのは、まさにこの問題に関するものである。

 アメリカにおいては、製造業の生産性の向上がはかばかしく進まないことが、ようやく社会的な関心を得るところとなっている。多くの観察者は、この問題の原因として、あるいは少なくともその一部として、十分な競争力を維持するだけの生産システム自動化に必要な資本設備への投資に対して、経営者が消極的であることを指摘している。しかし、そうした投資を実行したとしても、そのすべてが、必ずしも相応の利益をもたらすわけではない。おそらく産業界は、3つの基本的生産形態――液体や気体などの流動生産、独立の部品からの大量生産、独立の部品からのバッチ生産(工程断続型生産)――のうち、最後のカテゴリーすなわちバッチ生産工程において、自動化の促進によって最大の効果が得られると主張するであろう。

 大量の単一製品あるいは少数の規格化製品に適合する流動生産や大量生産においては、各工程は連続的であり、コスト低減効果を大きくすべく設定された一定の順序に従って流れる。さらに、これら両生産形態の工程は、特定の専用設備を必要とし、現在すでに高度に自動化が進んでいる。これとは対照的に、相対的に少量かつ標準化度の低い多種類の製品の生産に適合するバッチ生産は、断続的であり、一定不変の順序に従うわけではない。また、このバッチ生産は、汎用的な設備を必要とし、1工程での加工に比較的長い時間を要するとともに、単位当たりコストも比較的高くなり、そして自動化の進捗度は極めて低い。

 バッチ生産形態はアメリカの製造業全体の35%以上に相当し、また製造業の対GNPシェアの36%を占めている。したがって、バッチ生産で改善が行なわれれば、ただちに生産性向上の成果が得られるはずである。しかも、こうした改善が行なわれる可能性は、手を伸ばせば届くほどに近いものとなっている。最近のCAM(computer-aided manufacturing、コンピュータ援用生産)技術の発展は、流動生産システムや大量生産システムが従来から享受してきたのと同じ効率性をバッチ生産者も手にすることを可能にしている。しかし、非軍事関連産業の多くの企業は、CAMに必要な投資を容認するほどにはCAM技術について十分な知識――可能性と限界――を有してはいない(1)。

 したがって、バッチ生産工程の生産性に関心をもつマネジャーは、多くの基本的な問題点に注意を向けることが必要である。CAMとは正確には何なのか。それはどのような企業に適しているのか。CAM技術を導入するための企画を評価するには、どのような基準に拠るのが最善なのか。導入後には、どのような問題が生じる可能性があるのか。問題が生じた時には、それを解決すべき有効な戦略が存在しうるのか。

 私は、手初めにアメリカおよび諸外国の企業での集中的なインタビューのなかから、この種の問題に対する解答を見出そうとした。こうして得られた答えのなかには、実に思いもかけないようなものもみられる。

CAMとは何か

 一般にバッチ生産形態においては、生産者は、2つの種類の機械設備からの二者択一をよぎなくされていた。その1つは、トランスファー・ラインなどにみられる専用型の機械装置であり、年間2万個以上の単一部品の大量生産に最適のものである。こうした設備の専用化は、単位当たりコストの低減を可能にするが、フレキシビリティをもたない。他の1つ――在来型の旋盤、フライス盤、ボール盤などの非自動式汎用工作機械――は、例えば年間200個以下の多種類の部品の単品あるいは極めて小単位のバッチ生産に最適の設備である。この場合には、単位当たりのコストは高くなるが、工程のフレキシビリティが保たれるために、生産技術の変更、需要の変動およびプロダクト・ミックスの変更に即応することができる。

 年間200個から2万個の数種類の部品をバッチ形態で生産する生産者には、これら2種類の設備のいずれもが十分な適合性をもたない。汎用型の設備はコストが高すぎ、専用型の機械はフレキシビリティに欠ける。しかし今日では、バッチ形態の生産者は、コンピュータ援用生産という第3の選択が可能となった。それは、トランスファー・ラインよりフレキシビリティに富み、汎用型の工作機械よりも単位当たりコストが低いという性質をもつ。