その先に見えるのは、真のグローバル企業の姿だ。護送船団方式を嫌って日本経団連を脱会した楽天の三木谷浩史会長(兼社長)は言う。「英語公用語化はこれまでもやってきましたが、その『心』が大切です。世界中の子会社をあたかも1つの会社のように経営する。これまでは各国が人事制度やノウハウ、技術を別々で持っていた。これを統合していくことが重要になる」。
だから、わが国の組織のあり方も、違った視点から眺め直していく必要がある。わが国の組織の現実を直視し、常識を疑い、将来を見据えて行動していくことが、グローバル時代の人的資源の活用には大切だ。そのためには、ガラパゴス人事を脱していく必要がある。
日本の人事制度を斜めから眺めてみれば、いろいろなガラパゴスが見えてくる。今回は、会社への入り口である「新卒一括採用」に目を向けてみよう。
新卒一括採用の過熱ぶり
4月になれば、毎年恒例の「就職・採用活動(就活)」が最盛期を迎える。1年後の先に自分が働きはじめる場所を求めて、学生は勉学をそっちのけで浮足立つ。就活用に新しく買い換えたスマートフォンを片手に、髪の毛の色を戻して、板につかない背広姿で歩いている学生をキャンパスで多く見かける。企業の側でも、学生の質の低下に嘆きながらも、優秀な人材を確保しようとHPを刷新し、説明会の予約を受け付け、面接に躍起になる。
いまでは、企業の側はグローバル人材を求めているというのに、また、東京大学を筆頭に、全国の大学が「9月入学への移行」を検討し始めたというのに、依然としてわが国の労働市場は、新規学卒者の4月一括採用という枠組みから脱する気配はない。
その過熱ぶりは留まるところを知らない。情報の渦に巻き込まれて不安に駆られた学生たちは、熱心に応募を繰り返し、学生一人あたりのエントリー数は、平均で83.3社に上っている(「2012年卒マイコミ学生就職モニター調査」)。100社以上に応募しながら、それでも内定を得られない学生も少なくない。