また、「技能形成」や「暗黙知」を生み出した輝かしい成功モデルが、逆に先入観や固定観念となってしまい、変化の激しい時代に必要なグローバル人材を、速やかに調達したり育成したりするのが、かえって不得意になってしまったようだ。それを象徴するのが人事のガラパゴス化だ。

「脱」ガラパゴス人事の必要性

 国内でビジネスしていれば、グローバルの荒波にさらされることなく、内需を頼りに生きていくことができると思うかもしれない。天敵や強敵のいない静かな環境の下で、贅沢もせずに、まじめに仲よく生きてきたのだから、そっとしておいてほしいという気持ちもある。しかし今では、国内だけを相手にして、ビジネスが成り立つというのは考えにくい。

 内需依存型と思われてきた小売業や建設・不動産業やサービス産業でも、外国の影響が大きくなっている。作り手としても買い手としても、中国が大きな影を落としているし、はるか彼方、エーゲ海に面した小国ギリシャの経済危機が、巡りめぐってわが国に影響することなど、20年前だったらありえなかっただろう。

 わが国の将来についてニュースを見れば、年金問題や高齢化問題や消費税増税などが、よく取り上げられている。現在から見通した将来の姿は、けっして明るくない。余談になるが、2011年のFIFAクラブワールドカップで、優勝したFCバルセロナのメッシ選手に、独占インタビューを行った明石家さんまは、たった一問だけの質問に「サッカーの質問はみんな聞いてるやろうから、老後はどうしはるんですか」と聞いた。ここでも、未来というのは老後である。次世代への視点はまったくない。お笑いの世界にまで老後が広がっているというのは、お笑いだ。

 次世代の人事を考えれば、日本人だけが寄り集まった組織で、従業員が生涯勤め続けるという姿は想像しにくい。われわれの子どもや孫の世代を考えれば、競争相手として登場するのは海外の企業だし、職場の同僚として一緒に働いていくのも、外国人である。競争するにも協働するにも、外国との関係が離せなくなる。慣れ親しんできたこれまでの常識は通用しない。