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国有化された華僑の資産
1998年5月インドネシア。ジャカルタの通りを暴徒が埋め尽くし、中国人の店と家屋を合わせて5000軒以上を襲撃し、略奪と放火を繰り広げた。150人の中国人女性が強姦され、2000人以上が命を落とした。反中国感情と暴力のうねりはその後数カ月にわたってインドネシア全土の都市に伝播した。
このような人々の憤懣が爆発した原因は思いも寄らぬところにあった。すなわち、政府規制がないままに民主主義と自由市場の結合を図ってしまったことである。これは、発展途上国が抱えるさまざまな病を治すため、豊かな民主主義国家が勧めてきた処方箋にほかならない。いったいどこでこれほどまでに狂ってしまったのだろうか。
インドネシアは80年代と90年代を通じて、市場の自由化政策を強力に推し進めてきた。その結果、華僑――同国の人口のわずか3%に過ぎない少数派民族である――が民間経済の70%を支配することになった。
しかしながら、98年にムハメド・スハルト大統領を追放したと同時に、この国の大多数を占める貧しい人々は激しい反撃に打って出た。その対象は華僑であり、また彼らが支配する市場であった。
そのきっかけは30年もの独裁政治の後、突如実施された民主的な選挙だった。それは自由公正なものだったとはいえ、国内に満ち満ちていたのは、先住民族出身の政治家たちが民族的な生け贄を求める声であり、また中国人たちの財産を没収し、「人民のための経済」の確立を求める声だった。
現在、インドネシア政府は580億ドルもの資産を国有化し、その懐に抱え込んでいる。そのほとんどは、かつて華僑の大物ビジネスマンたちが所有していたものである。以前は生産性の高かったこれらの資産はいまや停滞し、失業と貧困は悪化するばかりだ。
富める少数派民族に貧しき多数派民族が報復する時
無論「市場民主主義が平和的な繁栄を促す」という考えが、歴史上いつも正しいとされてきたわけではない。



