過去10年間、すばらしい成長を見せてきたために、多くの小売業者、アナリストたちは、一様に、ノンストア・マーケティング(nonstore marketing)の将来性は、事実上、限りないものであると確信するにいたっている。また、現在、利用されている様々な形式のノンストア販売は、小売業の全般的な売上高よりも、はるかに早く伸び続けていくだけでなく、双方向CATVのような新しいマーケティング技術の応用によって、今日の驚くべき成長率は、さらに大きなものになっていくだろう。

 この楽観的予測に対して、著者たちは、事実に支えられていないものであると反駁する。ノンストア・マーケティングの未来は、本当に有望なものだが、その有望性は、決して無限のものではない。すでに稼働し始めているいろいろな力は、今日確立されている方法――メールオーダー・カタログその他同様のもの――の成長を遅らせると同時に、より新しい技術がすぐに役立つ範囲をも限定するだろう。

 冷静かつ公平な方法で、著者たちは、ノンストア・マーケティングに関する詳細な観察とその将来性に関する慎重な評価を行なっている。

 ときにはダイレクト・マーケティングと呼ばれることもあるノンストア・マーケティングは、小売業の次の革命となるだろうか。いくつかの楽観的な予想によれば、その答えは、疑いもなく"イエス"である。消費者が小売店舗を訪れることなく、商品やサービスを買うことを可能にする確立された販売技術は、すでにいくつか存在する。また、最近の技術進歩によって、いくつかの新しい方法も可能になってきている(以下のカコミで、この両者の簡単な説明を行なっている)。

ノンストア・マーケティングの種類(1)

既存の方法

 メールオーダー・カタログ
 ゼネラル・マーチャンダイザー(シアーズとJ.C. ペニー)、百貨店(ブルーミングデールズとメーシー)、カタログ・ショールーム(ベスト・プロダクツとサービス・マーチャンダイズ)、スペシャルティ・マーチャンダイザー(L.L. ビーンとホーチャウ)などは、定期的に目標とした、現在あるいは将来の客にカタログを郵送している。消費者は、電話注文あるいは郵便で注文する。あるいは、もっと伝統的な方法としては、小売店やカタログショールームを訪れ、カタログを見ながら買物をする。

 ダイレクト・リスポンス・アドバタジング
 活字、あるいはラジオやテレビの宣伝、あるいは、販売員からの電話によって、消費者は、ある商品の存在を知るようになる。そして、販売員の申し出に同意して、その商品を買う。あるいは電話(普通は無料電話になっている)で注文したり、注文書を郵便で送り返すことによっても買うことができる。テレビ、ラジオの宣伝を利用するダイレクト・リスポンス・マーチャンダイザー(販売業者)は、宣伝費を支払う代わりに、受けた引合い、注文に対してコミッションを局に支払う方法をとることが多い。

 訪問販売
 消費者は、販売員と顔をつき合せた話合いから、ある商品を知る。例えば、フラー・ブラッシュやエイボンでは、各家庭を訪れる販売員を使っている。スタンレー・ホーム・プロダクツやタッパーウエアでは、パーティを行なって販売している。また、アムウェーでは合法的な"ピラミッド"式販売(訳注)方法をとっている。商品情報を客に届けるのに、訪問販売は高いものにつくが、実物商品による説明、個人的なサービス、迅速な配送(その場で商品を渡すことなど)などが可能である。

 ベンディング・マシーン
 これらの機械は、インストアとノンストア・マーケティングの混合物だが、製造業者や卸売業者にとっては、小売業への商品流通を強化できるし、流通範囲が広がったことで、キャンデー、清涼飲料、タバコなどの衝動買いされる商品が、より便利に買えるようになった。これらの購入を合計すると、アメリカ全土では消費者は毎分、600万台あるベンディング・マシーンに約20万個のコインを落としている(2)。

新しい技術

 双方向CATV
 オハイオ州コロンバスにあるワーナー・アメックス・ケーブル・コミュニケーションズ・QUBEサービスのような双方向CATVシステムは、キーパド(情報を呼び出すための装置)を押すことによって、視聴者がテレビのスクリーンに映る商品を買い、その価格をクレジット・カードの口座ないしは銀行口座から差し引いてもらうことができるようになっている。このシステムは、視聴者がひじかけ椅子にすわったまま、衝動的な買物ができる便利さを提供している。注文するのに電話すらかける必要がないのである。

 双方向情報検索
 カナダのテリドン、英国のプレステル、フランスのアンティオプなどのシステムは、客が電話や双方向CATVなどを使って、コンピュータ・データバンクを利用できるようになっている。求める情報は、家庭のテレビ・スクリーンに現われる。情報は、また、デコーダー(コード化された信号を解読し、音ないし映像に戻す装置)を通じて、電話システムにもつながる。キーパドを操作することによって、スクリーンに現われる情報を消費者がコントロールすることができる。ナイト・リダー・ニューズペーパー・チェーンの子会社であるビューデータ・コーポレーション・オブ・アメリカでは、現在、フロリダのコーラル・ゲイブルズで、そのようなシステムの実験を行なっている。

 ビデオカセットとビデオディスク
 これらの装置は今日まで、主として普通ならば見られないテレビ番組を、録画できる手段として販売されてきたが、それだけでなく宣伝媒体として大きな可能性を持っていると考える人も現われてきている。ダイレクト・マーケティングの専門家であるマクスウエル・スロージによると、"ディスカログス〔ビデオディスク・カタログス〕が、向う3年以内に郵送されるようになるだろう"ということである(3)。

(1)ノンストア・リテイリングの詳細な分類は、ウィリアム・ダビドソンとアリス・ロジャーズによる、"ノンストア・リテイリング:商品納入業者および他の小売業にとっての重要性と彼らに与える影響"(マネジメント・ホライズン社、ワーキング・ペーパー、コロンバス、オハイオ、1977)に収録されている。
(2)"ベンディング・マシーンの売上高は、経済と歩調を合わせる"、ニューヨーク・タイムズ、1980年8月18日号。
(3)"ホーム・ビデオ、パート2:宣伝媒体としての将来はどうか"の中に引用されている。マーケティング・アンド・メディア・ディシジョン、1980年3月号104ページ。

訳注:社外の人間を販売員として登録し、ディストリビュータと名付けている。このディストリビュータが新しいディストリビュータを会社に紹介し登録させると、彼らの売上高の一定パーセントが、紹介したディストリビュータにバックマージンとして入る仕組み。アムウェーを頂点として最初のディストリビュータ、その後のディストリビュータなどがピラミッドの形を形成するので、このように呼ばれている。

 しかしながら、ノンストア・マーケティングのいろいろなタイプを1つ1つ説明するほうが、それ全体を1つのものととらえて、他の小売形態から区別して論ずるよりも、はるかに容易である。なぜならば、インストア、ノンストア・マーケティングの間にある境界線が、はっきりしていないからである。例えば、次の例を考えてみよう。

 □消費者は、何回か店舗で買物した後に初めて、メールオーダー(カタログ通信販売)で商品を買うだけの自信を持つようになる。その代わりに、カタログは、消費者があとで、店舗で購入することになる商品に関心を抱かせるのである。

 □毎年、年商7500万ドル以上の百貨店や専門店では、一般的に、部数が10万から100万のカタログを6~20種類発行している。典型的な百貨店においては、電話あるいは郵便による注文は、クリスマス・シーズン(1)で全売上高の15%を占めている。そして、歴史の古い小売業であるシアーズやラザラスでは、自社の商品やサービスを売るために、双方向CATVの実験を行なっている。

 □メールオーダー・ハウスであるタルボットやキャロル・リードでは、小売店舗網を拡大している。この小論を書いている時点で、タルボットは16店舗、キャロル・リードは15店舗(スキーショップを除く)持っている。

 □伝統的に小売店舗を通してのみ、自社製品を販売してきた製造業者が、もう1つの販路としてダイレクト・マーケティングを追加してきている。フォーチュン誌の"500社ランキング"の中の50社近くが、すでにダイレクト・メール/マーケティング・アソーシエーション(2)の会員になっている。

 □果物の栽培家や牛の飼育家、チーズの生産者たちは、メールオーダーによる食品販売が急成長していることに気付き始めている。現在、消費者は、"グルメ"食品を約500社あるメールオーダー・フード・ハウスから購入することができる。これらの企業では、年間売上高の4分の3をクリスマス・シーズンに売り上げている(3)。