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業界誌が伝統的なアメリカ企業の競争力低下に対する対策をとりあげる場合、一般に政府諸機関の専門家をはじめ、シンクタンクの経済学者、社会学者、経営コンサルタント、企業のトップ、財務専門家、さらに各界の学術専門家の意見まで聴取する。しかし、抽象的な概念としてではなく、日常の仕事を通じてそうした問題を実際に肌で感じているアメリカの工場の製造担当マネジャーの意見を聞こうとはしない。そして、現場の担当者がいかにすぐれた識見を持っていても、それが企業の総合的経営戦略に反映されないかぎり、その価値は十分に発揮されない。
現場の体験と企業全体の経営戦略との結合が驚異的な成果をあげている例は、日本の産業界にみることができる。日本で成功している戦略的業務政策は、アメリカでも同様の成果を期待できよう。だがそのためには、アメリカ企業は現場の業務管理を、真に経営戦略の柱として考えることを学ばなければならない。
近ごろアメリカでは、日本の製造業の目ざましい成果の秘訣を探ることが、ベースボールに代わって日常の話題をさらったといっても過言ではなかろう。だが問題は、試合に参加しているアメリカの経営者が、この新しいゲームのルール、現在のスコア、そしてゲームの正確な状況についてさえ、意見の食い違いを見せているという点である。
こうした混乱をあおるかのように業界紙は、日本企業の輝かしい業績は、神秘的でとうてい真似のできない文化的理想とか、政府の政策、産業内部の構造的関係によるものだと書き立てている。もしそれが事実なら、アメリカの経営者の不安はつのるばかりである。というのは、日本企業の経験のなかからアメリカが学びとれるものはなにもない、ということになるからである。だが果たしてそうなのであろうか。実例をみると、それは事実ではないということが分かる。そこで次に、具体的ケースについて述べてみたい。
イリノイ州フランクリンパークにあるモトローラのテレビ(クエーザー)の組立工場は、1970年代前半に松下電器に買収されるまでは、生産性は低く品質も劣っていた。不良件数は100台につき150件を上回るという状態だった。ところが松下電器がこの工場を買収後3年以内に、生産性は30%上昇すると同時に、不良件数は100台につき4件以下に激減した。
それでも同クラスの日本の工場の平均0.5%以下という不良品率と比べるとはるかに高いものの、日本の専門技術の多くは、少なくともアメリカに移植できるということが分かる。加えて、サンディエゴのソニーのテレビ工場およびアーカンソー、カリフォルニア両州にある三洋電機の工場のケースも、それを実証している。
それではその秘訣はなにか。文化的理想でも政府の政策あるいは産業構造でもなく、生産システムの管理に関するユニークな理解こそが、成功の秘訣なのである。すなわち、日本人は製造業務を効率的かつ規律正しく遂行する方法を考案し、それを実行に移したにすぎない。そこにはなんらなぞめいた仕掛けがあるわけではなく、いかに製造業務を効果的に管理したか、ということにつきるのである。
日本企業3社――東京三洋電機、東芝鶴見工場、横河電機製作所の各工場を訪れた二十数名のGEの製造担当マネジャーは、最初のうちは日米の生産管理の違いは文化と環境によると考えていた。ところが視察を終えた時点では、その考え方は一変した。それはつぎのように集約される。
「とくに驚くほどのことはなにもない。私どもの知っていることばかりだが、私どもはそれを規律正しく実行に移すことを怠ったのだ」とメンバーのひとりは報告している。
またある人は次のようにコメントしている。「日米の差が技術的あるいは高度の戦略的なものだったとしたら、それを学ぶことはできよう。だがもっとも重要な相違はそうした点ではない」。



