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従業員はAIにみずからの存在を脅かされているように感じている
かつて人間だけのものと思われていた仕事を生成AIが担うようになるにつれ、働き手は自分の役割や組織内での価値をいままでとは違った形で認識し始めている。これは良いことだろうか、それとも悪いことだろうか。
この疑問を探求すべく[注1]、筆者らは職場におけるモチベーション、パフォーマンス、ウェルビーイングに関する心理学理論と、生成AIが知識、業務、そして労働者の生産性や仕事自体の社会的特性に与える影響に関する学際的研究を統合した。
その結果、生成AIが3つの重要な心理的欲求を満たすか、それとも妨げるかによって、かなりの部分が決まることが明らかになった。すなわち、有能性(自分には影響力や能力があるという感覚)、自律性(自分の行動を自分でコントロールしている感覚)、関係性(人との間に有意義なつながりを築いている感覚)である。
これらの欲求が満たされている場合、従業員は生成AIを便利なツール、あるいはコパイロットとして受け入れる。しかし欲求が満たされない場合、従業員は脅威を感じ、時には自分の存在そのものが脅かされていると感じて、生成AIの利用を躊躇する。
現在のところ、ほとんどの労働者は後者に当てはまる。ITインフラサービス企業のキンドリルが、8カ国の25業界を対象に実施した2025年の調査によると、CEOの45%が、多くの従業員が職場での生成AIの使用に抵抗するか、公然と敵意を示していると回答した。
この問題の大きな要因となっているのは、ほとんどの企業が生成AIの導入に関するチェンジマネジメント戦略を定めておらず、従業員の生成AI活用を支援するための正式なトレーニングの機会を提供していないことである[注2]。このような不備があることを考えれば、リーダーやマネジャー側と労働者側との間に溝が生じるのは当然のことである。
ボストン コンサルティング グループ(BCG)の2025年の調査[注3]では、リーダーの85%とマネジャーの78%が日常的に生成AIを使用する一方、労働者の使用率は51%に留まることが明らかになっている。
リーダーが労働者の抵抗に対処できるように、筆者らは生成AIを業務に統合するためのフレームワークを開発した。本稿では、生成AIが3つの基本的な心理的欲求をどのように満たすか、あるいは脅かすかを解説する。そのうえで筆者らのフレームワークを提示して、生成AIに対する従業員の受容性、生成AI利用のモチベーション、生成AIとのエンゲージメントのレベルを高める方法を説明する。
3つの心理的欲求にどのように対応するか
目まぐるしく変化する職場では、有能性、自律性、関係性という重要な従業員の欲求を満たすことができるリーダーが、チームの適応力、学習、ウェルビーイングを促進できることが研究[注4]で示されている。この見方を裏づけるのが、生成AIへの反応が大いに注目される2つの専門職グループ、すなわち医師と脚本家の経験である。以下、AI導入の取り組みに対する両者の反応の違いを見ていこう。
[1]有能性
生成AIによって、あらゆる種類の労働者が能力を強化できる。生成AIの支援があれば、技術的な専門知識のない者でも高度なスキルを要する業務を遂行でき、専門知識のある者は有能性をさらに広げることができる。その結果、2025年にマーク・ザッカーバーグが述べたように、生成AIは労働者に「いままでよりも、はるかに多くのことを成し遂げる」モチベーションを持たせられるようになった。



