消費者の「フレーミング行動」を逆手に取る

 ソニーの経営陣は問題に直面していた。このエレクトロニクス業界の巨人はライバルを出し抜くため、家庭用ロボット1号機の開発に何千万ドルも注ぎ込んできた。

 しかし、多少なりとも人様の役に立つ個人用ロボットを開発するという試みは暗礁に乗り上げていた。ソニーが作成したプロトタイプはどれも故障が多く、てんで当てにならなかったのだった。

 このまま無一文に終わるか、最悪物笑いの種になるという事態を避けつつ、まだ揺籃期にあるこの市場で、いったいどうすれば確固たる足がかりを築くことができるのだろうか――。

 たどりついた答えは、技術を完璧にするという呪縛から逃れることだった。ソニーの経営陣は最初から次のことに気づいていた。つまり、どのような商品であろうと、それがハリウッド映画に出てくるロボットを連想させられれば、消費者は即座にその商品を「ロボット」という「決定フレーム[注]」に分類するということである。

 もしある商品の外見が、映画『スター・ウォーズ』に登場する有名なロボット、C-3POに似ていれば、消費者はそれがC-3POのように行動すると予想する。そしてもしイメージしたような能力がないとわかれば、ひどく失望してしまう。

 そこでソニーは、消費者のこのフレーミング行動を意識的に利用して、ロボットの短所を転換した。期待どおりにまったく動かない家事手伝いロボットを開発するよりは、楽しくて愛らしいペット・ロボット――だれも実用性など期待しない――をつくればよいのだと。