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大企業の影響力
温室効果ガスに関する法規制は、現時点では、差し迫った脅威には見えないかもしれない。しかし一部の企業は、ルールが決まった暁には自分たちに有利に働くよう、あれこれと手を打っている。
たとえば、デュポン、ロイヤルダッチ・シェル、BPアモコ、アルコア、ウェアーハウザー、モトローラ、アメリカン・エレクトリック・パワーなど、60社近い企業が排出量の目標を自主的に定め、その達成に向けて鋭意努力中である。
この過程で一部の有力企業(その売上高を合計すると1.5兆ドル以上にもなる)は着々とノウハウを学び、蓄積している。いざ政府がルールづくりに乗り出す際には、政策立案に関与できる諮問委員の指名を獲得する、あるいは政府と駆け引きするといった場面で、このような知識がものを言うに違いない(囲み「規制策定までのロードマップ」を参照)。
The Road to Regulation
規制策定までのロードマップ
京都議定書はロシア待ち
京都議定書は温室効果ガスの排出量を規制する国際条約であるが、まだ発効されていない。しかしどの国でも、何らかの規制は制定せざるをえない状況にある。
京都議定書が発効されるには、最低55カ国が批准し、かつ批准国の排出量が削減義務国総排出量の55%以上に達しなければならない。
ただし、批准国の数はすでに120カ国に達し、第1の条件は満たされた。第2の条件のほうは、17.4%を排出するロシアの批准待ちである。いまのところ先進国では、オーストラリアとアメリカの2カ国がここから離脱する方向を打ち出した。
いっぽう、京都議定書の行方とは別に、一部の締約国や地域、すなわち、EU、イギリス、カナダ、デンマーク、中国などは、排出量の削減を目指して独自の規制プログラムの立案に着手している。
アメリカの現政権は温室効果ガスの規制に気乗りしていないが、連邦レベルでプログラムを立ち上げる動きはもはや止まりそうにない。45近い法案が議会に提出され、最近ではジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出、共和党)とジョゼフ・リーバーマン上院議員(コネチカット州選出、民主党)が超党派で提出した法案が上院で採決に持ち込まれた(2003年10月30日)。最終的には否決されたものの、55対43という僅差であった。
97年、同じ上院で京都議定書の批准が全会一致(95対0)で否決されたことを考えると、提案された排出権取引制度が政界も満足できる内容に近づいているのは間違いなさそうだ。
アメリカでは州ごとに対策が進む
連邦議会に意見の一致が見られないことをよそに、アメリカでは多くの州が独自の試みを進めている。
たとえば、カリフォルニア州は全米のトップを切って、自動車メーカーに対して2008年モデルからCO2排出量を制限する法律を成立させた。またアメリカ北東部6州は、発電所のCO2排出量を制限する計画を発表している。この措置は2005年4月から施行される予定である。
またこれらの州は2010年をめどに、温室効果ガス排出量を90年の水準から10%削減する計画も可決し、京都議定書よりさらに意欲的な取り組みを見せている。
このほか、ニュージャージー州は2005年までに、州の温室効果ガス排出量を90年の水準から3.5%削減することを決め、最大手の電力会社および56の大学とは排出量を90年の水準以下に抑える協定を結んだ。
メーン州知事は2010年までに、CO2排出量を90年の水準まで削減する野心的な法律に署名した。さらにワシントン州は、西海岸での温室効果ガス削減を目指すオレゴン州、カリフォルニア州の取り組みに参加する意思をこのほど明らかにした。
ここで見逃してはならないのは、これらの企業が排出権取引について海千山千の商人になりつつあるという点である。いわゆる「キャップ・アンド・トレード方式」による排出権取引は、端的に言えば、汚染物質を発生させる権利を売買する商品市場の一形態である。
排出権取引が、温室効果ガス政策の重要な柱の一つであることは間違いない。たとえば、規制当局がメタン排出量に上限を設定し、各社に割り当てた場合、それを上回る量を排出している企業は、排出量が割当量を下回る企業から権利を購入できる。逆に下回る企業は、自社の権利を売りに出すことが可能である。
排出権取引に精通した企業は、政策の立案過程に影響力を行使できる点でも、施行後にいち速く対応できる点でも、有利な位置につけている。
たとえば、BPは排出権取引ですでに5年の経験を積んでおり、1998年にはその取引市場を試験的に開設した。ここでは、企業間で排出権の売買ができる[注]。



