新規事業の定石

 ユーモア社会学者として知られるローレンス J. ピーターは、「ひどくやっかいな問題というものがある。そのようなものに直面したら、うんと賢くて、知識がないと、決断を避けることすらできない」と皮肉った。

 企業の業績改善はそのようなやっかいな問題の一つであり、複雑な大企業のなかで新規事業を興すケースなどはなおさらといえる。

 課題は山積みである。いかにして前進すべきか、いやそれどころか、一歩踏み出すべきかどうかすら、なかなか決められない。そのような時、定石は悩めるCEOの一助となろう。

 幸いにも数多くの学者が何十年も前からこの問題に取り組んできた。そして「新規事業の立ち上げ」「コーポレート・ベンチャー」「社内起業」「社内イノベーション」など、名称こそさまざまだが、その結論が言わんとするところは驚くほど似ている。

 ところが、このような研究成果がわかりやすく示されたことはほとんどなかった。そこで、本稿で簡潔に紹介しよう。題して、「新規事業10の心得」である。

(1)企業の成長とは新規事業を興すことにほかならない

 ほとんどの企業にとって、他に選択肢はない。プルマン・レイルロードの寝台車やシンガーのミシンの例からもわかるように、事業そのものが衰退することもあれば、新しい技術の誕生で既存の製品やサービスが陳腐化することもある。

 後者の最たる例が、デジタルカメラの出現で顧客を奪われたポラロイドだ。

 また、いかなる市場も成熟する。ホーム・デポは全米に1100店舗を展開したいまになって、この事実を思い知らされている。

(2)新規事業の大半は失敗に終わる

 長期的な成長に新規事業は欠かせないが、これを成功させるのは難しい。成功率の低さには、何とも落胆させられる。

 1970~80年代には、ベンチャー企業の60%が設立6年以内に失敗に終わっている。大企業のベンチャー事業も、ややましという程度であった。