イノベーションの功罪

 野球で満塁ホームランを狙ってフルスイングしたり、競馬で三連勝単式を目当ての賭けに出たりするように、イノベーションで一か八かの勝負に出るのは魅惑的な賭けだ。

 次の大ヒット商品や次世代のビジネスモデルといった画期的なイノベーションは、大いに話題になるのに対し、地味なイノベーションは気づかれることもない。しかし近年、画期的なイノベーションは、成長戦略として窮余の一策にとどめておくべきとする事実が、次々に浮かび上がっている。

 サン・マイクロシステムズが直面している難問を考えてみよう。

 1982年の創業以来、同社はハイエンドのコンピュータ・ワークステーションのほか、インターネット・ソフト開発における大きな推進役を果たした〈Java〉、企業ホームページの多くが拠りどころとする強力なインターネット・ファイル・サーバーなど、数多くのヒット商品を開発してきた。

 ドットコム・バブル時代のサンは、まるでインターネットはサンを中心に広がっているとでもいうような躍進ぶりだった。

 しかし、その後は、画期的な製品の発表が途切れがちになっている。

 さらに悪いことに、業界きってのイノベーターを自認するあまり、アプリケーション・ソフトウエアやコンサルティングをはじめ、より確実な成長につながる可能性の高いイノベーションには手を出さなかった。一方、ライバル企業は、そのような分野に進出して顧客を囲い込んでいった。