新製品とは改良品のこと

 エンジニアリングとは、つまりは改良であり、いわば比較の科学である。

 市場には「新たに改良された」製品があふれ、たとえば「歯が白くなる」「洗濯物がふかふかになる」「調理時間が短縮される」などのうたい文句で宣伝されている。

 もっと大型のシステムも、相対優位の部分を宣伝されている点では変わらない。より高くより広いオフィスビル、より長くて軽量な橋に、より寿命の長いバッテリーを搭載した、よりスリムなラップトップPC、といった具合である。

 しかしながら、あらゆるものが既存の製品やシステムの改良版であるとしたら、これほど多くのものが失敗するのはなぜだろう。新商品が低迷し、システムがクラッシュする理由とは何か。

〈ゼムクリップ〉への挑戦から学ぶもの

 ただのピンであれ、資材調達システムやラスべガスのリゾートであれ、何かを変えよう、改良しようとする時、まずは失敗について知らなければならない。成功は自身のやり方が正しかったという自信を与えてくれるものの、何がよくて、なぜ成功したのかは、必ずしも教えてくれない。

 しかし、失敗は何かが間違っていたことの明白な証拠であり、実に貴重な情報といえる。

 リエンジニアリングは、何によらずリスクをはらんでいる。たとえば、ペーパークリップを考えてみよう。

 過去1世紀の間に、何百種類ものクリップが開発され、いずれも古典的な〈ゼムクリップ〉と比べればどこかしら改良が施されていた。しかし、どれ一つとして〈ゼムクリップ〉の座を奪うことはできなかった。