修羅場の数を踏むだけ肝が据わる
中島氏は現在、製薬企業のCOOとして経営戦略の立案と実行を担う中で、BCGで過ごした時間が「予想以上に効いている」と感じる瞬間が少なくないという。「クライアントからの難しい課題、高い期待に対して何らかの答えと価値を提供する経験を重ねると、どんな問題に直面しても、必ず最後は何とかなるというメンタルタフネスが培われます」
現時点で優れた答えが見えていなくても、仲間と本気で取り組めば最善策にたどり着ける——。修羅場をくぐり抜けた回数だけ磨かれたその胆力が、中島氏のいまの立場でも活きている。
取締役 チーフ オペレーティング オフィサー(COO)
中島理恵氏
トヨタ自動車、BCG、バイオ医薬品企業MSDの執行役員、台湾法人社長などを経て2023年より現職。米ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。
中島氏はBCGに入社した当初、全員が仮説思考やロジカルシンキングなどの高いハードスキルを持つ集団だからこそ、難題に対しても答えを出せるのだと思っていたという。だが実際には人それぞれに得手不得手があり、プロジェクトリーダーがその時々のメンバー構成を踏まえて、誰がどの役割を担えばチームとして価値を最大化できるかを見極めていた。
「ですから、完全にチームワーク。分析が強い人、クライアントとの話の中からインサイトを紡ぎ出してくる人など、一人ひとりの強みをうまくミックスして良い答えを出していました」
一人では太刀打ちできない難易度のプロジェクトだからこそ、多様な専門性を持つ人材が連携する。北沢氏によれば、近年のBCGはこの「強みの掛け合わせ」をさらに加速させているという。これまでのコンサルタント像にとどまらず、デジタルやAI、サプライチェーンといった特定の分野で経験を積んだプロフェッショナルの採用も増えている。
北沢氏は「私が重視するのは、高い専門能力でどんな局面でも価値を出せる人です。たとえば、コミュニケーション能力が突出して高い人は年代にかかわらずいますよね」と語る。そうした人材は、日本の大企業特有の複雑な意思決定の場面でも、議論を取りまとめ、壁を突破する力を発揮できるという。ハードスキルかソフトスキルかを問わず、自分の得意分野がビジネスの現場で通用するなら、BCGの扉を叩く価値はある。北沢氏のその言葉から、多様な個性を歓迎する姿が浮かび上がる。
マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
北沢真紀夫氏
1996年にBCGに入社。BCGヘルスケアグループのアジア・パシフィック地区リーダー。コーポレートファイナンス&ストラテジー、および社会貢献グループのコアメンバー。
本音でしか、人は動かない
多様な企業・職種・地域でキャリアを重ねてきた中島氏にも、大きな壁にぶつかった経験がある。
一つは、働き方を大きく見直さざるをえなかった時期だ。家庭を持ち、子どもが生まれると、それまでの仕事中心の生活では立ち行かなくなる。「すべてのメールに即レスすることで人とのコミュニケーションや信頼を築いてきた分、それをやめることには心理的な抵抗がありました」と回想する。
特定の問題について誰よりも真剣に考え抜く「累積思考時間」で価値を出すというBCGの流儀も、いったんは手放すしかなかった。だが、時間に制約があるからこそ、本当に重要なことに絞って優先順位を決めるようにした結果、家族との時間を捻出しながら、仕事にもきちんと向き合えるようになったという。
もう一つは、リーダーとしての壁だった。より大きな組織を任されるようになると、知性やスキルだけでなく、人間性で人を動かす力が問われる。自分が腕まくりして問題を解決すれば人がついてくるわけではなく、ビジョンや思いに共鳴して人はついてくる——。その感覚がなかなか腹落ちせず、「体現することに苦戦しました」と中島氏は率直に振り返る。
