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離職率を左右する要因は現場ごとに異なる
小売業者は、現場の最前線に立つ従業員の離職率が高いと不経済であることを、ずっと前から認識してきた。マネジャーがたえず新しい従業員を採用・育成しなければならず、時間と資金が失われるためだ。
一般に、シフト編成は離職率を左右する大きな要因であるとされている。従業員の離職を減らすため、小売業者には「勤務スケジュールを早めに提示すること」「一貫性があり、見通しが立ち、公平な勤務スケジュールを作成すること」「遅番の翌日に早番が続く『クロープニング』を禁止すること」が求められている。
こうした対策は有効だが、筆者らの研究[注1]で米国の20の大手小売チェーン店を対象に従業員130万人のシフト2億8000万件を調査したところ、実態ははるかに複雑であることが明らかになった。シフト編成のどの側面がどのような影響を及ぼすかは、店舗ごとに異なる。特定の店舗で何が最も重要か、さらにシフト編成が離職の増加にどの程度影響しているかは、データ分析を行わなければ判断できない。
これまでの離職防止対策の多くは、的を絞れておらず、画一的で、対象となる職場の従業員に関するデータに基づいたものではなかった。しかし、人材管理システムに蓄積された豊富なデータの活用により、マネジャーはこれまでに比べてはるかに効果的な対策を講じられるようになった。アナリティクスを活用すれば、現場ごとに最適化した勤務スケジュールを作成し、従業員の満足度と人員配置の効率性の双方を向上させることができる。
本稿では、シフトを設計し、運用するうえで、それぞれの現場にとって最も重要なポイントを特定し、優先順位をつけ、実行する方法を示す。筆者らのデータは小売業界のものであるが、同様の構図は、シフト設計・運用の不安定さが離職率増加につながる、現場業務を担うサービス業全般に当てはまる。
筆者らが提唱する方法は、さらなるデータ収集や新たなインフラ構築を必要とするものではない。ここで必要なのは、適切な分析能力だけだ。
ほとんどの小売業者は、特定の店舗における離職率について理解するのに必要な生データをすでに保有している。たとえば、タイムスタンプ(勤務開始、休憩、業務完了、勤務終了の時刻を電子的または物理的に記録したもの)、シフトパターン、各種承認、欠勤などのデータである。
しかしながら、多くの企業はこれらのデータを収集するシステムを、給与計算のため、あるいは政府の法令や規制を遵守していることを証明するために使用しているにすぎない。筆者らの知る限り、筆者らの研究が提唱するデータに基づいたカスタマイゼーションを本格的に実施している組織は存在しない。
したがって、本稿で紹介する方法は、現場従業員の離職率が高い企業に対して、短期間で自社事業に重要かつポジティブな影響をもたらしうる解決策を提供するものである。
離職による高い代償
筆者らの調査対象となった20の小売業者の間では、従業員の定着率に著しい差が見られた。年間定着率は、わずか30%から73%と幅があり、平均は52%だった。また、勤続期間の中央値は5カ月から13カ月とばらつきが見られた。一方、多くのホワイトカラー職では、年間定着率は通常80%を超えている。物流や製造の職種でさえも、70%以上を維持していることが多い。



