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取締役会議長に求められる資質が大きく変わった
取締役会議長として手腕を発揮することは、以前にもまして難しい。議長が今日対応しなければならない利害関係者は増えると同時に次第に多様化し、往々にしてそれぞれの要望が折り合わない。一方で、自社を取り巻く環境はますます混沌としてきた。
気候変動、AIをはじめとするテクノロジー、政治不安から新たなリスクが生じる中、自社が直面する問題の数と複雑さは劇的に増している。さらに、議長が一緒に仕事をしなければならない取締役会の顔ぶれも多彩になっている。このような状況の変化を受けて、議長の仕事はわずか10年前と比べて難しくなっているばかりか、よりいっそう多くの時間を必要とするようになった。
ロンドン・ビジネススクール(LBS)のリーダーシップ研究所が2021年に着手し、現在も継続中の研究プロジェクトでは、取締役会議長に求められる資質が大きく変わったことが確認されている。FTSE100種総合株価指数に採用されている企業の取締役100人以上(30人超の議長を含む)を対象に行ったインタビューでは、経営幹部としての豊富な経験や戦略策定と実行における実績といった古典的な強みより、大量の情報を統合する力、複雑なデータからパターンを認識する力、相反する意見に耳を傾けて調和させる力、明らかな見解の相違に対応する力のほうが議長の成功にとって重要になったことが明らかになった。
筆者らは数十年にわたって、1000人以上の取締役(数百人の取締役会議長を含む)と協働し、彼らについて研究を行ってきた。また、筆者ら自身も取締役を務めた経験を有する。その中で、取締役会に対する要求が変化するのを2人とも同じように見てきた。
企業と同様、取締役会もいまや機動性を高め、複雑さや意見の対立に対応するスキルを大きく向上させなければならない。最も優れた取締役会議長はこうした課題に対処するために、学びの文化を構築し、利害関係者のさまざまな意見に耳を傾け、それらを集約する形で問題を解決する方法を編み出している。また、CEOに対する取締役会の要求がますます増え、時には圧倒的な量に達する中で、CEOとより緊密に関わり、CEOがそれらの要求に対応するのを支援している。
本稿では、非業務執行の取締役会議長を中心に、議長がどのように職責をまっとうしているかに関する筆者らの知見を共有する。
学びの文化を構築する
取締役会が現在直面する世界では、明確な正解と不正解はほとんどなく、どちらかと言えば良い答え、どちらかと言えば悪い答えがあり、それが一夜にして別物に変わることもある。そのような世界では、たった一日の出来事によって戦略が崩壊しかねない。
こうした環境で成功するには、取締役会が素早く方向転換することが必要になる。そのためには、取締役全員が全力で貢献し、建設的にかつ互いを敬う方法で連携しなければならない。
となれば、取締役会議長は心理的に安全な環境を整えて、議論の指揮を執り、取締役会のメンバーが遠慮することなく自由にさまざまな意見を表明し、互いに疑問を投げ合って建設的な話し合いが行われるようにしなければならない。そして議論が終わった段階で全員の意見を集約し、取締役会全体として決定を下す方向に導く必要がある。
優れた議長がそのために行っていることを以下に説明する。



