多様なバックグラウンドを持つ「越境人材」が
進むべき道を浮かび上がらせる

――近年、経営環境が目まぐるしく変化している要因の一つは、既存の産業の枠を超えた課題や、産業同士の融合、侵食などが進んでいることにあると思われます。みずほ総合研究所は、そうした課題をどのように解決できますか?

米倉 我々は、「鳥の目、虫の目、魚の目、コウモリの目」という4つの視点を大切にしています。鳥の目はマクロ視点、虫の目はミクロ視点のこと。また魚の目とはサステナやデジタルなどトレンドの流れを見る目。最後のコウモリの目とは、製造業と流通など「産業の枠を超えて見る視点」です。特に足元では、AI、データセンターや蓄電池など、一つの産業からの視点では全容が捉えられない産業横断の課題が増えてきています。

 産業調査部はもちろんのこと、私が部長を務める戦略コンサルティング部門でも、異なる産業のお客様を支援するコンサルタント同士が、それぞれの産業の関わりについて日々意見交換を重ね、戦略の立案や実行に反映させています。

入山 経営者にとって4つの視点はすべて重要ですが、なかでも必要なのは鳥の目でしょうね。全体観を持ってビジョンやストーリーを描き出すためには、やはりマクロ的な視点が欠かせません。

 その点、虫の目(ミクロ視点)だけでなく鳥の目(マクロ視点)も持ったみずほ総合研究所の提案は、経営者の納得感が得られやすいのではないかと思います。

早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)
入山章栄教授
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年から現職。主な著書に『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)など。

――みずほ総合研究所には、多様なキャリアを持つ人材が揃っていると伺っています。人材の幅と厚みは、どのような強みにつながっているのでしょうか?

米倉 おっしゃる通り、当組織の人材のバックボーンはさまざまです。私個人を例に挙げても、みずほグループの中で、銀行と証券、国内と海外、官と民、産業アナリストと戦略コンサルタントなど、異なる領域や職種をいくつも経験し、個人の中で多様な視点と知識を兼ね備えてきました。

 お客様のバランスシートの右側(借り入れ・資本)と左側(投資)の両方を俯瞰して戦略・戦術を提案できるというのは、普通のコンサルタントではなかなかできないのではないかと自負しています。同じように、多様な経験に基づき、多面的な角度から提案ができる人材が、みずほ総合研究所には揃っているのです。

入山 米倉さんのように多様なキャリアを持つ人は、「越境人材(バウンダリースパナー)」としての適性を備えています。部署や専門分野、社内外の垣根を越え、ミクロとマクロ、あるいは産業と産業の“橋渡し役”を担える人材です。

 そうした人材が揃っているからこそ、先行き不透明な経営環境の中でも、さまざまな知の掛け合わせによって、クライアント企業が進むべき道を浮かび上がらせることができるのでしょうね。

お客様の事業にインパクトを与え続けられる
パートナーでありたい

――ところで入山教授は、企業が不確実性の高い経営環境を乗り越えるためには、「ダイナミック・ケイパビリティ」を磨き、「リアル・オプション」を持つことが重要だと説かれています。具体的にご説明いただけますか?

入山 経営学におけるダイナミック・ケイパビリティとは、企業が変化に合わせて自己変革し、競争優位性を生み出し続ける力のこと。リアル・オプションとは、将来の不確実性に対して、「計画を途中で変更・中止・拡張・延期できる柔軟性」を価値として捉える考え方です。

 前者は、「変化に合わせて自分たちを変えていく」というのですから、ごく当たり前のことにすぎません。ただし、誰もが勝手にそれをやろうとするとバラバラになってしまうので、経営者から現場に至るまで、全員が腹落ちするような意思統一が必要になります。一方、後者についても、正解のないところから、計画の変更や中止、拡張、延期を決めるのですから、やはり全員の腹落ちと納得が求められるわけです。

 そこで大事になってくるのは、「俎上に載せる選択肢をどれだけ用意できるか?」ということ。そもそもリアル・オプションの考え方は、「選択肢が多く、柔軟性が高いほど、不確実性が高い時にオプションの価値は上がる」というものです。

米倉 その点でも、我々の強みが存分に発揮できると思います。M&Aやファイナンス、IT導入まで戦略実行に伴走する実行部隊がグループにいるおかげで、実務への解像度が高い。さまざまな専門家や実務に精通するコンサルタントを有し、その知見や経験に基づいて多彩な切り口の戦略オプションが提示できるからです。

――最後に米倉さんに伺いますが、インパクトパートナーをキーワードに掲げられていると聞きました。この言葉には、どんな意味が込められているのでしょうか?

米倉 お客様の事業や、日本の産業、ひいては日本経済全体にポジティブなインパクトを与え続けられる存在でありたいという意味の言葉です。

 ただ提案をするだけでは、真のインパクトはもたらされません。先ほど入山教授がおっしゃったように、経営者から現場に至るすべての人々が腹落ちするようなナラティブストーリーにして、実務にまでしっかりとつなげる。そのために、我々はお客様と「伴走」し続けることにこだわっています。

 時代の先を読み、社会の変化を捉え、課題に対するお客様の挑戦を支える。そうした我々の取り組みは、みずほフィナンシャルグループのパーパスである「ともに挑む。ともに実る。」を体現したものであるといえます。

 これからも、お客様と一緒に汗を流しながら、日本の産業力の向上、日本企業の稼ぐ力の向上に貢献していきたいと思っています。

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