サプライヤーポータルにより、双方の企業価値向上を目指す

――協力会社との信頼関係強化、あるいはサプライチェーンの高度化に向けた方針についてお聞きします。

枝常 大林組の事業は、長年にわたり協力会社の皆さんとの信頼関係に支えられてきました。その関係を変えるのではなく、社会環境の変化に合わせてさらに持続可能なものへ発展させたいと考えています。そのためには、互いの役割と責任をより明確にし、公平・対等な立場でそれぞれの力を発揮できる関係を築く必要があり、協力会社との契約においても互いの責任範囲を明文化しています。契約に基づく責任範囲に対し、元請け側・協力会社側がそれぞれベストを尽くすことによって、各プレーヤーが切磋琢磨する関係づくりを目指しています。

 また、協力会社の皆さんがそれぞれの強みや専門性を発揮できる領域を広げることは、協力会社の企業価値向上にもつながると考えており、元請けとしてもそのために必要な支援・協力を行い、協力会社の役割分担や提供価値に応じた適切な取引関係を築くことで、サプライチェーン全体の高度化につなげていきたいです。

山口 企業のガバナンスに対する社会の要求は厳しさを増しています。大林組は業界でもいち早く、ガバナンスやリスク管理体制の構築に注力してきました。協力会社とのパートナーシップを強化するうえでも、調達に関連するデータの活用は重要です。

――サプライチェーンの高度化に向けた具体的な施策について教えてください。

毛利 現在、サプライヤーポータルの再構築を進めており、調達関係のさまざまな情報を集約する場にしたいと考えています。当社が目指している新たなポータルは、単なる情報管理ツールではありません。協力会社の皆さんとの情報共有やコミュニケーションを円滑にし、双方にとって価値のある接点となり利便性の高い基盤にしたいと考えています。

木村 たとえば、将来の案件動向や必要となる工種・資材に関する情報を適切な範囲で共有できれば、協力会社の皆さんにとっても計画的な体制づくりに役立つと考えています。ポータルを通じた情報共有が互いのメリットにつながり、双方の企業価値向上につながる。そんなポータルを目指しています。

山口 現在、ポータルのモックアップを作成して検証作業を行っています。協力会社の皆さんの使い勝手を重視しており、ユーザーが手間なく便利に使える仕組みにしたいと考えています。今後、段階的にサービスを開始し、ポータルを拡充・成長させていく予定です。

毛利 これからは、協力会社の皆さんから「一緒に仕事をしたい」と思っていただける元請けであることが、これまで以上に重要になると思います。よきパートナーとして大林組が選ばれるためには多方面の取り組みが必要ですが、魅力的なポータルづくりはその一環です。

――調達改革における今後の展望をお聞かせください。

枝常 調達本部が目指すのは、単に購買を集約することではありません。積算見積から調達までの情報をつなぎ、受注から施工までを見通しながら、価格、納期、品質、供給能力を総合的に判断する仕組みへと進化させることです。調達を建設事業の持続的成長を支える中核プロセスへと高める。それが私たち調達本部の目指す姿です。

中嶋 積算見積・調達業務は他のさまざまな業務とつながっています。全体最適の視点から各プロジェクトを俯瞰し、関与することで、少しずつデータ連携やAI活用の領域を広げていきたいと考えています。

毛利 調達改革を通じて、より公平・対等なパートナーシップの構築を目指しています。共に建設プロジェクトに携わる多様な事業者がそれぞれの企業価値を高められるよう、事業共創パートナーとしての関係づくりを進めていきます。そのためには、システムづくりだけでなく、契約や支払い条件のさらなる見直しなども必要になるでしょう。協力会社の皆さんとともにパートナーシップを追求することで、サプライチェーン全体の持続的な成長に貢献していきたいと考えています。

山口 調達本部立ち上げの前後から、PwCコンサルティングは調達改革プロジェクトを支援してきました。「調達業務ポリシー」の策定支援を含め、さまざまな活動を積み重ねてきています。この改革は、個別システムやAIを導入するプロジェクトではありません。業務、データ、組織、人の役割、協力会社との関係を一体で見直す変革です。変革の主体である調達本部、部門横断で改革を推進するBPR部とともに、構想を具体化し、現場で使われる仕組みとして定着するところまで伴走していきます。

木村 中期で進められている新たな見積業務プロセスの構築を含め、調達本部とBPR部で連携して進めている取り組みは、建設業界では非常に難易度が高く、チャレンジングな試みです。一品一様の構造物を扱っていること、見積や調達のもととなる設計情報が工程の進む中で詳細化されていくこと、海外と異なる日本の契約形態、一つの協力会社が複数の元請け会社と取引しているという業界特徴があるためです。社内外のさまざまなステークホルダーと新しい「カタチ」をつくっていく試みであり、調達改革の成功は大林組の競争力強化に直結すると考えます。私たちもチャレンジしながら、ともに調達改革の道のりに伴走したいと考えています。

調達改革で得た知見を全社的な変革へ
株式会社大林組
代表取締役社長 兼 CEO
佐藤 俊美氏

1985年大林組入社。財務・経営企画部門や14年間に及ぶ海外勤務を通じ、幅広い経営経験を重ねる。「常に正しいことをする」を信条に、2025年より社長兼CEO

 

 

 

 

 建設事業は、お客様の多様なニーズに応えるため、協力会社をはじめ、多くのステークホルダーとの協働によって成り立っています。人手不足や資材価格の高騰、供給制約など、事業環境の不確実性が高まる中、安定したサプライチェーンは、事業継続を支える重要な経営基盤です。

 調達改革の主体である調達本部には、積算見積から調達、施工までの情報とプロセスをつなぐことで、価格、品質、納期、供給力、リスクを総合的に判断する仕組みを構築し、将来を見据えた戦略的な調達を推進するとともに、不確実な事業環境における安定調達と競争力の向上につなげてほしいと考えています。そして、協力会社の皆様との信頼関係を基盤に、公平・対等なパートナーシップを深め、サプライチェーン全体の持続的な発展を牽引することを期待しています。

 AIの急速な進化を、一部の業務の単なる効率化やコスト削減に留めてはなりません。AIの実装を前提に業務のあり方や意思決定の構造そのものを事業目的に照らし合わせ体系的に見直し、人が専門性を活かした判断、課題設定、関係者との対話など、より高度な役割に力を注げる環境をつくる必要があります。BPR部には、調達本部の主体性を尊重し、その挑戦に伴走しながら、業務、データ、組織、人の役割を一体で捉え、関係部門をつなぎ、全体最適の視点から変革を加速させる役割を期待しています。さらに、調達改革で得た知見を他の領域にも展開し、部門ごとの変革を全社的な変革へとつなげてほしいと考えています。

 調達本部が変革を主導し、BPR部が部門横断でその実現を支える。この両輪によって、「誠実なものづくり」と「挑戦」という大林グループの価値観を具体的な仕事の形にし、持続的な成長と企業価値の向上につなげていきます。

 

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