従業員満足度と生産性のパラドックス

 従業員に自分が担当する仕事を決める権利を与えることは、エンゲージメントと定着率を向上させる明らかな方法のように思える。ウォルマートや米国陸軍などが、内部人材市場を利用しているのはそのためで、これは従業員が組織内のさまざまな役割、プロジェクト、業務を探し、応募することができる仕組みである。

 しかし、従業員により多くの選択肢を与えれば、業績は向上するのだろうか。あるいは、企業がコントロールを手放すと、生産性が犠牲になるのだろうか。

 コロンビア・ビジネススクールのボー・カウギル、オレゴン大学のジョナサン・デイビス、エモリー大学のパブロ・モンターニュ、イェシーバー大学のパトリック・ペルコウスキーは、大規模な組織で2つのアプローチを比較した。一つは、企業主導の職務の割り当てで、リーダーが会社の優先順位に従って従業員を役割に配置する。もう一つは、市場ベースのシステムで、従業員とマネジャーが希望を順位づけして提出し、アルゴリズムが従業員とポジションをマッチングさせる。

 研究者らは、この2つのシステムにおける人員配置の結果を調べ、対照群として、従業員を無作為に職務に割り当てた。次に、その会社が作成した統計的に検証済みのモデルを使い、従業員のスキルが職務に必要なスキルにどれだけ合致しているかによって各従業員の生産性を予測した。さらに、従業員の当初の希望に基づき、マッチングされた職務の満足度を測定した。これらのデータを用いて、予測される生産性と職務満足度のトレードオフを評価した。

 その結果、明確な隔たりが明らかになった。会社の優先順位に基づいたマッチングは、無作為なものよりも生産性が33%高いと予測された。一方、従業員の希望を考慮したマッチングは、無作為なものよりも生産性がわずか5%高いと予測されたが、従業員の個人的な評価は38%高かった。つまり、マネジャー主導の割り当ては即時の生産性を最大化し、従業員の希望に基づく割り当ては彼らの幸福度を最大化するのだ。

 これは興味深いパラドックスを生む。幸せな従業員はより生産的であるとされているのに、なぜ満足度が組織にとってより大きな価値に結びつかないのか。この隔たりは、職務に求められるものと従業員のスキルとの不一致によって引き起こされることを研究者らは発見した。このミスマッチはさまざまな理由で発生し、多くの場合、プロジェクトや職務の説明が不十分で、従業員が自分のスキルがどれだけ合っているかを完全に理解できていないという。

 従業員が将来活用できる新たなスキルを習得するために、挑戦的な役割を選ぶこともある。たとえその職務がすぐに企業の生産性につながらないとしてもだ。従業員にとって、この戦略はキャリア形成の観点から理にかなっている。