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次々に提示されてきた
新たなリーダーシップスタイル
2020年、リーダーシップ研究のトップジャーナルである『リーダーシップ・クォータリー』にマッツ・アルベッソンの「楽観的なリーダーシップ:成功するリーダーシップ理論のためのレシピ[注1]」というタイトルの論文が掲載された。この論文は、さまざまなリーダーシップスタイルが次から次へと提示されていく昨今のリーダーシップ研究を批判的に捉え、そのことに一石を投じるものであった。
リーダーシップ論は学界のみならず実務界においてもその最新理論が常に注目されてきた。それは、多くの実務家がよりよきリーダーシップを振るう必要に直面している証左ともいえるし、多くの人がよりよきリーダーの登場を待っているためだとも考えられるだろう。それに伴ってここ50年、リーダーシップ研究は飛躍的に広がり多様化したが、その蓄積が実務に十分に活かされているとは言いがたい。また冒頭に述べたように、リーダーシップ論自体に対しても批判的な言説がある。本稿ではリーダーシップ論の変遷を整理し、研究と実践の接続に向けた示唆を提示したい。
多岐にわたる定義と3つの特徴
リーダーシップは、リーダーシップ論を学ぶ人々の間だけでなく、スポーツやビジネス、教育、政治などさまざまな実際の場面でも用いられる言葉である。それゆえ、リーダーシップの定義は多岐にわたる。また、この定義そのものも時代によって少しずつ変わってきている。
たとえば、定評のあるバーナード M. バスらによるリーダーシップのハンドブック[注2]によれば、1920年代においてはリーダーがフォロワーにみずからの意思を押しつけ、服従や尊敬、忠誠、協力を引き出すのがリーダーシップとされた。さらに時代を下り、いまから約50年前に当たる1970年代になると、リーダーの影響力は裁量的なものであり、構成員によって異なるものと見なされるようになった。その後、1980年代の代表的な定義では、リーダーシップとは他者に目的のある行動を取らせるように鼓舞することとされた。1990年代になると、共通の目的を反映した真の変化をもたらそうとするリーダーとフォロワーの間にある影響力とされた。
一連の流れはリーダーシップ論の混乱を示すものではなく、求められるリーダーシップが時代とともに変容してきていると考えるほうが自然である。それぞれの研究者は、意味のある研究を志すうえで、その時代に必要なリーダーシップを規定し、その特定のリーダーシップによる影響を研究してきた結果、時代とともにリーダーシップの定義が変遷してきたと考えるべきであろう。
このようにリーダーシップにはさまざまな定義があり、そのあり方が多様に広がってきた。2000年代に入ると、さらにリーダーシップがリーダーだけの問題でなく、リーダーとフォロワーの間の問題──つまり「プロセス」であることが強調されてくる。また、多様なリーダーシップを包括するような定義も示されるようになる。その代表的なものがゲイリー・ユークルとウィリアム・ガードナーによる定義[注3]である。そこではリーダーシップは「何をすべきか、どのようにすべきかを理解し、同意するように他者に影響を与えるプロセスであり、共有された目標を達成するために個人や集団の努力を促進するプロセスである」とされる。
あらためてこのリーダーシップの定義に基づくと、リーダーシップの特徴として次の3つを挙げることができるだろう。第1は、リーダーシップには影響を与える他者が必要で、リーダーシップはこの他者との間に生まれるものである、という点である。一般には、このリーダーシップを及ぼす他者のことをフォロワーと呼ぶ。またこのことから第2の特徴が見える。リーダーとフォロワーは最初から規定されるものではなく、リーダーシップが発生した際に影響を及ぼした側をリーダーと呼び、及ぼされた側をフォロワーと呼ぶことになる。つまり、リーダーシップが発揮されて初めて、リーダーとフォロワーが規定されるという特徴である。組織にはリーダーという役割はあるものの、必ずしも公式のリーダーのみがリーダーシップを発揮するわけではなく、組織成員全体がリーダーシップを発揮する可能性もある。
第3の特徴は、共有する目標に向かっていくためにリーダーシップは行使される、ということである。また、定義の前段にあるように、リーダーシップの文脈においては、リーダーが何をすべきか、どのようにすべきかを理解し、同意するようにフォロワーに影響を与える。つまり、フォロワーが目標を共有されることなく、なぜこのようなことをするのかということも十分に説明されずに従わなければいけないといった状況は、リーダーシップが発揮されているとは呼べないということでもある。
あらためてこのリーダーシップの定義を踏まえると、リーダーシップの基本的な構図は、
リーダーの働きかけ
↓
フォロワーの行動
↓
成果や価値の創出



