CEOの空白をどう埋めるのか

 自社のCEOが突然、辞任してしまう。解任されることもあるだろう。考えたくはないが、急に亡くなってしまうようなこともあるかもしれない。

 このように突如としてCEOが不在となった時には、明日にも会社の指揮を執る責任者が必要になる。後継者となる正式なCEOが決まっていなければ、おそらくは暫定CEOを任命することになるだろう。正式な常任CEOが見つかるまで船の舵取りをする役割を担う。

 とりあえず暫定CEOを任命しようという考え方は理解できる。突然の退任劇で対応を迫られた場合にはなおさらだ。だが、それが高くつくこともある。

 取締役会は暫定CEOの起用を「限定的で一時的な安全策」と見なすことが多いが、投資家とアナリストはそこまで好意的には見てくれない。プレスリリースに「暫定的」という文字が登場した瞬間に株価は下落し、多くの場合、そこから坂道を転げ落ちていく。企業が暫定CEOを任命すると、一般にそこから数年間で数億ドル規模の損失を被り、その損失が組織再編や人員削減につながることが少なくないのだ。

 にもかかわらず、暫定CEOを任命する取締役会は増え続けている。いまやCEOが交代する場合、3件に1件は暫定CEOが起用されている。10年前は5件に1件だったのに、なぜ増えているのか。筆者らの研究によれば、この傾向をもたらした要因は3つある。

 第1の要因は、変化のスピードが加速し、ますます予測困難になる中で、サクセッションプラン(後継者育成計画)の策定がこれまで以上に難しくなっている点だ。複数の研究結果からも明らかになっているように、もともと取締役会はサクセッションプランの策定に苦労しており、プランが存在しない場合は暫定CEOの起用に頼るケースが多い。

 第2の要因は、CEOが退任する頻度が増えている点だ。アクティビストによってその座を追われたり、会社再建の過程で交代させられたりするうえ、単純にCEOの任期が短くなっていることもある。突然のCEO退任に対して、取締役会の準備が整っておらず、組織を安定させるために慌てて暫定CEOを任命する場合もあれば、組織変革を任せるためにあえて暫定CEOを起用する場合もある。

 第3の要因は、暫定CEOを置く真のコストを取締役会が過小評価している可能性だ。筆者らが経済メディアを検証したところ、記事の大半は暫定CEOの起用を「慎重で思慮深い」と評価しており、そのリスクとデメリットに触れた報道はほとんどなかった。

 暫定CEOの起用は、会社の価値を毀損して利益率を下げるケースが多いとはいえ、組織の安定化や変革の強力なツールとして役立つこともある。では、暫定CEOが最も効果的なのはどのような場合か。そして、成功と失敗を分けるものは何なのか。

 筆者らは10年以上にわたりCEOサクセッションと事業変革について研究を重ねてきたが、最近、この問題に対する答えを求めるべく新たな研究に着手した。2002年から2024年の間にS&P1500企業で暫定CEOを起用した400件以上の事例を分析し、暫定的リーダーシップに関する研究を精査した。それらに加えて、実際に暫定CEOの任命に関わった企業の経営幹部や取締役十数人にインタビューを行った。