課題を潰すのではなく、課題が生まれない構造へ

 知を開放するために中川氏が取ったアプローチは、彼がクライアントに求めるものと同じだ。すなわち、あるべき状態を先に定義し、そこから逆算して何を変えるべきかを問う。向かった先は、コンサルファームは何を売ってきたのかという問いだった。

「クライアントが真に買いたいのは『成果』のはずです。しかし、実際に売っているのはコンサルタントの『時間』であり、そこに根本的なミスマッチが存在しています」

 人の時間を売る限り、知が届く範囲はその総量に縛られる。開放とは逆を向いた構造だ。だから中川氏は、請け負う対象を入れ替えた。

「これまでの『コンサルティング1.0』が課題解決を請け負うものであったのに対し、私が提唱する『コンサルティング2.0』は目的達成を請け負うビジネスです」

 顕在化した課題が10個あったとして、1つずつ解決する必要があるだろうか。実はそうではない、と中川氏は言う。ある1つの課題を生む根本的な問題を特定して排除できれば、他の課題は顕在化しない。残り9つを解く必要はなくなる。

「目の前の課題をもぐら叩きのように潰していくのではなく、見えていない根本的な問題を言語化し、それが起きない構造へと再定義する。それこそが、目的達成に向けた最短距離です」

 ECGEはクライアントの理想の状態を言葉で定義し、共通認識として握る。見えていないものの言語化は難易度が高く、多くの企業は後回しにしがちだ。だからこそ、ECGはクライアント自身が考える何倍もの時間と熱量で相手のことを考える。言葉にした時、「ありたい姿」の解像度は上がり、議論は対症療法から中長期の視点へと移る。そして、クライアント企業は目的達成型組織へと進化していく。

 では、目的達成以外の実務は誰が担うのか。答えはAIである。ただし導入の仕方には、発想の転換が必要だ。

「既存の業務と組織にAIを当てはめるのではなく、デジタルワーカーとしてのAIの存在を前提として、組織とタスクを再設計することを考えるべきです」

 その前提に立てば、人間の役割は3つに絞られるという。仕事の目的を定義すること。組織固有の論点や順序を踏まえて問いを立て、優先順位を組むこと。最終的な意思決定を下すこと。

 ECGは、この設計を自社に適用している。クライアントの事業に精通したコンサルタントをアサインし、その知識と経験をAIエージェントに継続的に学習させ、プロジェクトごとに最適化していく。それがECGの「プロジェクトAI」だ。その開発は企業ごとのテーラーメードで、月額30万円から提供している。

 熟練コンサルタントの知は、24時間365日、誰の問いにも答えるAIエージェントに移植される。そして、人の関与は目的の設定と伴走に絞られていく。中川氏はこのビジネスモデルを囲い込むつもりはない。「他社が積極的に模倣してくれれば、コンサルティングの民主化が加速します」