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歴史は未来を創造する
強力なツールである
「過去にこだわる必要はない。重要なのは未来だ」──我々は経営史の専門家として企業のコンサルティングに携わることが多いが、企業幹部のこうした発言をたえず耳にする。
組織の歴史が取り上げられるのは、たいてい創業の周年記念の時である。あるビジネス・リーダーは(それだけ時間やお金をかけても持続的な効力はないことを承知したうえで)自社の200周年記念を「お祭り騒ぎ」の一環と表現していた。祝祭行事が無意味だというわけではないし、一歩先を見据えて日々注力しなくてはならない経営者には同情もする。変化の激しい世界では、ノスタルジアや些細な事柄はもとより、かつて成功した戦略にさえ浸っている余裕はほとんどない。
しかし、歴史から学ぶには根気が足りないリーダーが、重要な真理を見逃しているのも事実である。過去を精緻に理解することは、未来を創造するうえで最も強力なツールの一つとなる。食品大手のクラフトフーズが2010年、イギリスの製菓会社のキャドバリーを買収した例を考えてみよう。