交渉のプロセスを組織的活動ととらえる

 大型の契約や取引案件の大半は、一連のより小規模な案件の上に成り立っている。それは、大規模合併や大型の売却案件、インフラ投資計画、あるいは一部の国連決議にも当てはまる。こうした取引は、焦点を絞った多数の交渉を集大成したもので、個々の交渉は、さまざまな利害を持つ多様な当事者の間で進められる。

 取引をまとめる際の助言のほとんどは、一つひとつの小規模案件に適した戦術をいかに選択するか、という問題に対するものだ。そもそも個別の小規模案件をどのように特定するのかについては言うまでもなく、それらをどのようにつなぎ合わせて一つのパズルを完成させることができるのか、といった手引きを示した文献は見当たらない。ここに問題があるのは明らかだ。

 ミッタル・スチールがヨーロッパ最大の鉄鋼メーカー、アルセロールを買収した事例を見てみよう。これは、最終的には331億ドルに相当する規模の複雑な取引であった。