CFOはCEOを支える
ビジネスパートナー

CFOのあるべき姿、期待される役割を問う前半の基調講演に続き、後半は、現役CFOの視点に切り替えてさらなる議論が行われた。端緒を開いたのは、CFOの課題認識の実態に迫るCFOサーベイだ。来場者が、配布されたiPadを通じて経営環境や取り組むべき課題などの設問へ回答。回答結果に対し、デロイト トーマツ コンサルティング 社長の近藤聡氏の進行の下、その場で壇上のトーマツグループの各専門家がコメントを加えるという新しい試みだ。
参加者が自社を取り巻く環境や課題を認識し直したところで、最後に、現役CFO4人に伊藤氏が加わってのパネルディスカッションが行われた。
前半は、各パネリストがCFOの役割として3つのキーワードをあげ、それぞれについて考え方を聞いた(下の表)。各社各様ではあるが、全体として「企業経営全体を俯瞰し、CEOを支えるビジネスパートナーである」ということに方向性の一致を見ることができた。
後半ではCFOの行動にまで議論が及んだ。CFOは資本市場やファイナンス組織、CEO、さらには事業と向き合っている。まず、資本市場を対象と考えた時、オリックスの浦田晴之氏は次のような点に注意しているという。
「CFOとして心がけているのは、足元の状況を説明するだけでなく、将来ビジョンやそこに至るプロセスを数字を根拠に自分の言葉で説明すること。そのためには、CEO、COOはもちろん、事業部門との普段からの会話が欠かせません。そこには市場の声のフィードバックも含まれます」
また、ファイナンス組織に対する役割について、味の素の大野弘道氏はこう語った。
「ひと言で言えば、人材育成に尽きると思っています。財務的なガバナンスという観点、外部のステークホルダーの理解を得ること、内部ではCEOや事業部門に対してきちんと提言することも求められます。こうした力を一人ひとりが培い、全体としてのレベルアップを図っています」
CEOとの向き合い方については、日清食品ホールディングスの横山之雄氏も次のように述べる。
「CFOはCEOにとって相談相手であり、知恵袋、時にはケンカ相手でもあります。CEOにとっては耳の痛い話であっても、そうした情報を伝えるのが仕事。ただ、そのタイミングは非常に難しい。先読みをしながら動くことで、早めの対応が可能になるのではないかと考えています」
事業との関係については、三井物産の岡田譲治氏が自社での新しい試みを説明した。
「今年4月に、事業支援ユニットという新組織を立ち上げました。そのメンバーは営業とファイナンス両方の組織から集めました。従来、営業部門が投資や取引などの案件を社内に持ち帰り、それをファイナンス部門がチェックするという流れでしたが、これでは時間がかかる。そこで、案件を発掘する段階からファイナンス人材が関与することで、スピードアップと業務の効率化を目指しています」
4人のCFOの議論を聞いたうえで伊藤氏は、「冒頭で日本企業のCFO機能が弱

グローバルボード副会長
小川陽一郎氏
いと言いましたが、その認識は変わりつつある」と打ち明けた。「やがて、日本企業のCFOが欧米のCFOを超える日が来るのではないか。その日をできるだけ早く迎えるよう、皆さんと一緒にCFOについて突き詰めて考えていきたいと感じています」と総括。
最後は、モデレータを務めたデロイト トウシュ トーマツ リミテッドの小川陽一郎氏が「今後、グローバルで世界と競合していかなければいけない時代。世界と肩を並べるCFO組織をつくっていけるよう、私たちもお手伝いをさせていただきます」と締めくくった。
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