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イノベーションのリスクを減らす5つの経験則
吹雪のなかをボストンからニューヨークまで車を運転しなくてはならないとしたら、四輪駆動と二輪駆動どちらのほうが安心できるか、自問してほしい。おそらく四輪駆動だろう。ところが交通事故の統計を見れば、四輪駆動車が登場してからも、降雪時の走行距離当たりの事故件数はさほど減少していないと気づくはずである。ここからあなたは、イノベーションによっても雪の日の運転は少しも安全性が高まっていない、と結論づけるかもしれない。
言うまでもなく、実際のところはイノベーションが安全性の向上に失敗したのではなく、「以前より安全だ」という感情のせいで人々の運転習慣が変化したのである。以前と比べて雪のなかを出掛けていく件数が増えているほか、おそらく運転時の注意も散漫になっているだろう。もし以前と同じスピードで同じ交通量のなかをニューヨークまで運転すれば、四輪駆動車のほうがはるかに安全だと考えられる。しかし、スピードを格段に上げたら、従来吹雪につきものだったものと同じリスクを背負うことになるだろう。要するに、意識的にかどうかはともかく、人々はリスク低減と成果向上の二者択一を行っているのである。
イノベーションのリスク度が人々の選択次第で決まるなら、多くの情報を基に慎重に選択を行ったほうが、リスクは低いということになる。にもかかわらず企業や政策当局は、イノベーションがどういった結果を生み出すか、つまり人々の取捨選択と行動がどう変化するかを検討する際に、イノベーションがどう活用されるかを決めるのに使われるモデルの限界を意識しておかなくてはいけない。詳しくは後述するが、根本的な欠陥を持つ排除すべきモデルもあれば、改善の余地のあるモデルもある。特定の用途にしか適さないものもあれば、利用者に経験や知識がないと成果を引き出せないものもある。