数々のイノベーションを生み出してきたDARPA

 半世紀以上もの間、アメリカ国防総省国防高等研究計画局(DARPA)は、圧倒的な数のブレークスルーを生み出し続けてきた。画期的な発明に関しては、間違いなく史上最も長きにわたって着実な実績を持つ組織だといえる。

 DARPAによるイノベーションには次のようなものが含まれる。インターネット、RISCコンピューティング、全地球測位システム(GPS)、ステルス技術、無人飛行機(通称は「ドローン」)、微小電気機械システム(MEMS)などだ。特にMEMSは、エア・バッグからインク・ジェット・プリンター、〈Wii〉のような家庭用ゲーム機に至るまで、多くの機器に応用されている。その本来の顧客はアメリカ軍だったはずだが、DARPAの先進的な研究活動は、数十億ドル規模の各種産業を創出するのに多大な貢献を果たした。

 DARPAの数々の実績をひときわ印象づけているのは、迅速な意思決定、割と小規模な組織体制、そして控えめな予算である。プログラム実施期間は平均して3~5年ほど。プロジェクトに取り組むのは任期制の技術プログラム・マネジャー約100人と、多種多様な分野から集まる契約ベースの「パフォーマー」、すなわち大学、大小さまざまな規模の企業、研究所、政府関連機関、非営利団体から選ばれた個人やチームがプロジェクトを進めている。支援スタッフは、財務、契約関連、人事、セキュリティ、法務を担当する120人だけだ。約200件のプログラムが常時進行しており、その年間予算は約30億ドルである。DARPAはその型破りな手法、スピード、有効性によって、イノベーションの「特殊部隊」モデルをつくり上げた。