セールス・マシンを脱却する

 営業部門のリーダーたちは長い間、営業プロセスの統制に執着してきた。彼らは機会(オポチュニティ)スコアカード、能力基準、行動の測定基準などを生み出してきたのである。

 これらはすべて組織的な営業プロセスの一環であり、最も優秀な営業担当者のアプローチをメンバー全員が再現することを意図して設計されている。言わばセールス・マシンの世界だ。圧倒的な効率と世界トップ・レベルのツールやトレーニングを武器にして、フォーカスが甘く統制力の劣る競合企業を営業実績で上回るためのマシンである。長年にわたり、このマシンをうまくチューニングすることが営業効率を上げる主な手段であった。

 しかし近年、営業部門は、顧客の購買行動の劇的な変化にうろたえている。これまで成果を上げてきたプロセスの遵守を経営陣が徹底させても、営業実績はいっこうに安定しない。セールス・サイクル・タイムの長期化、顧客転換率の低下、予測精度の低下、利益率の縮小が多数報告されている。セールス・マシンのエンジンが止まりかけているのだ。