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13万個の弁当が行きかうムンバイ
2005年7月、ムンバイは尋常ならぬモンスーン豪雨に見舞われた。わずか12時間のうちに630ミリを超える雨量がインドのビジネス中心地を襲ったのである。この時の豪雨は記録的な高潮と相まって広範な被害をもたらし、同市の機能は事実上停止した。多くの地域で水位は腰の高さにまで至り、駅、電車内、道路、歩道で人々は立ち往生した。
そのなかにはムンバイで働くたくさんのダッバーワーラーの姿が見られた。ダッバーワーラーとは、顧客が自宅でつくった弁当を、顧客の職場に運び、その後空になったダッバー(金属製の弁当箱)をその日のうちに自宅に戻す配達人である。洪水の2日目でまだ都市機能が回復していないにもかかわらず、ダッバーワーラーは仕事に戻り、水のなかを苦労して歩いていた。たちまちのうちに、彼らは不屈の回復力のシンボルとなった。
同市には約5000人のダッバーワーラーがおり、驚くべきサービスの実績を持つ。平日は毎日、人口が世界第4位のムンバイ市の至るところに13万個以上もの弁当箱を運ぶ。彼らは毎日6時間で26万回以上運ぶことになり、これを週6日、1年に52週(ただし祝日は除く)行うのだ。それでも手違いはきわめて稀だ。読み書きもあまりできないダッバーワーラーたちが、ほとんど自己管理で、非常に低コストかつ環境に負担をかけない方法によって、ITシステムどころか携帯電話さえ使わずに、この水準の実績を出しているのは驚くべきことではないか。