ヘルスケア分野でも広がる
コ・デザインを取り入れる動き

Live Well Collaborativeのメンバー企業は1業種1社。そこにはP&Gをはじめ、ボーイングやシティバンク、ファイザーなどが名を連ねている。
「企業はメンバーとして参加するため、年間5万ドルを支払います。加えて、プロジェクト1回当たり10万~15万ドル程度を負担します。プロジェクトで創出された知的財産権は、基本的に企業に帰属します。ただし、場合によっては、特許を大学と共同保有することもあるようです」と上平氏。すでに多くの事例が生まれており、入院患者などが使う着脱しやすい部屋着、デンタルケア製品などのデザイン、あるいはプロトタイプが公開されている。
コ・デザインは、さまざまな分野に広がっている。大きな注目を集めているのがヘルスケアである。
「この5月にはニューヨークで、『ヘルスケア・エクスペリエンス・デザイン会議』が開催されました。会議のテーマは大きく二つ。一つは、ビッグデータなどITを使っていかに医療をよくするか、もう一つは、ペイシェント・エクスペリエンスを高めるデザインです」と上平氏は語る。

この会議は2日間にわたって開催され、デザインやヘルスケアなどの分野から多くの専門家が参加した。会議では医療機器、院内設備から、健常者の自己管理のためのウエラブル技術や各種アプリと幅広い適用分野で、コ・デザインなど、ユーザー・エクスペリエンスを高める手法による開発が紹介されていたという。未来的な製品やサービスを見て、上平氏は驚いたという。共創の波は一般家庭で使われる製品、サービスからヘルスケアの分野にも広がりつつある。
医療機関における先進事例として有名なのが、米ミネソタ州に本拠を置くメイヨークリニック。全米はもとより、世界の医療関係者が注目する病院の一つである。
「患者や医療スタッフのエクスペリエンスをデザインするために、用いられた手法の一つがジャーニーマップと呼ばれるものです。患者について言えば、来院して病院内で検査や診察を受け、入院、そして退院するまでの過程をジャーニーマップに表し、『このときに患者はイライラしていた』といった課題を洗い出す。あるいは、『こうすれば、もっと喜んでくれる』とアイデアを話し合うのです」(上平氏)
メイヨークリニックの高水準のサービスは、こうした活動の積み重ねによって支えられている。