二面的アプローチを行うための
3つのタスク

 2010年8月5日の昼過ぎ、チリのアタカマ砂漠に位置するサンホセ鉱山で、70万トンを超える岩盤が突如崩落し、地下坑道に通じる中央通路をふさいだ。坑道入り口付近にいた作業員たちはあわててすぐに脱出したものの、地下の奥深くで作業をしていた男性33人が、世界でも一、二を争う固い岩盤の下に閉じ込められてしまった。

 地下鉱山での事故は珍しくないが、サンホセ鉱山の落盤事故はいくつかの点で異例の事故だった。作業員たちが閉じ込められたその深さ、不安定な岩盤、そして鉱山自体の古さと安全面における高い悪名などである。さらに、事故発生から2日後には2度目の落盤が発生して通気坑もふさがれた。専門家たちの推計では、行方不明となった作業員たちを見つけ出し、生きたまま救出できる可能性は1%未満だった。

 しかし、地下2300フィート(約700メートル)の深さで過去最長の69日を過ごすことになる作業員たち──自称「ロス33」[注1]──は衰弱していたものの、10月13日に全員無事に生還した。最後の作業員が地上に引き上げられ、救助隊が「ミッション完了、チリ」と記された幕を掲げる場面を、テレビを通じて10億人の人々が固唾を飲んで見守った。