ネットワーク効果の法則は正しいのか

 多くの製品やサービスの価値は、利用者の数に伴って増減する。たとえば、使われているファクシミリ機の数が少なければ少ないほど、それを保有する意義は小さくなる。クレジット・カードからファッション、オンライン・ゲームに至る幅広い産業で、こうした「ネットワーク効果」が消費者の意思決定に影響を与え、競争可能な企業の数を制限する。

 ネットワーク効果を持つ事業環境で生き延びるための戦略には、よく知られたものがいくつかある。「一番乗りを目指せ」というのが一つ。「規模の拡大を急げ」というのもある。市場シェアを積極拡大し、価格を抑え、小規模プレーヤーを買収するのだ。

 我々は全世界の数十社を対象に、これらの法則が本当に成功に結びつくのかを調査した。多くの場合、それは優れた業績をもたらす戦略となっていたが、同時に、その「常識」が完全に通用しないケースも意外なほど多く見つかった。そして、法則が機能しない時の理由はいつも同じだった。拡大を急ぐ際に、企業が顧客の違いを考慮しなかったのである。