これから出てくる
ビジネスモデルは?
第2部では、岩佐文夫・DHBR編集長が三谷教授へいくつかの質問を投げかけた。以下、おもな質疑応答の要約を掲載する。
岩佐:企業が新たなビジネスモデルを考え、それを競争優位につなげるには、単なるアイデア以外に何が必要か。
三谷:あらゆる視点からビジネスを構築すること。
たとえば、ジレットが新しいビジネスモデルを構築できたのは、単にアイデアがあったからではない。最初にアイデアはあったが、それを形にするために、まずは替え刃用の薄い鋼板を作る技術を開発する必要があった。
また、商品が完成してからは新しいコンセプトを浸透させるために、大々的に広告を打たなければならなかった。さらにヒットしてからは特許争いが勃発したが、きちんと正面から立ち向かい、必要なら相手と和解したり、買収することでこれを乗り切った。三井・越後屋と同様に、「売り方」「つくり方」「資金調達」「儲け方」そのすべてにおいて革新的であったからこそ、競争優位が持続するビジネスモデルが構築できた。
岩佐:これから10年続くようなビジネスモデルは出てくるのか。
三谷:もちろんあり得る。
たとえば、アメリカの会員制フラッシュセール「Zulily」(ズーリリー)などはおもしろい。非常に狭い範囲のターゲット(妊婦さんや乳幼児の母親)に対して、高級ブランドやニッチなメーカーの商品を、限られた時間だけ破格値で販売し、注文が確定してから製造を開始する、というAmazonとは対極の仕組みで大成功した。
たった数年で売り上げ1000億円に達し、上場を果たした。特別なIT技術に頼らずとも、新しいビジネスモデルはまだまだ出てくると考えている。

[制作/ダイヤモンド社クロスメディア事業局]