文脈重視かコンテンツ重視か

 経営方式・設計図を因数分解すると、大きくは、文脈(コンテクスト)部分とコンテンツ部分に分かれる。文脈部分とは人が形成する文脈で、その企業の従業員の間で暗黙に了解されている慣習や状況に応じたルール・定石などを指す。コンテンツ部分とは、ミッションや戦略、組織構造、制度等を指す。

 緑と青の差異は、まず、両組織における文脈部分とコンテンツ部分の重要度のバランスの差異に現れる。

 緑の組織では文脈のしめるウエイトが大きい。重要事項も含め、ものごとは文脈で決まりやすい。この場合の文脈とは、長期的に雇用される「同じような人々」が形成する文脈である。

 これに対して、青の組織ではコンテンツの占めるウエイトが大きい。ミッションや戦略や組織構造や制度といったコンテンツが明確に定められて、共有され、そういうコンテンツ部分の設計図に従って物事が進められる。

  ここで注目すべきは、コンテンツと文脈の間には、経営の手段としての使い勝手に大きな差があることだ。コンテンツは容易に書き換えることができる。コンテンツを重視する青の組織においては、必要に応じて設計図のコンテンツ部分を書き換え、諸事を変えるという作法が発達している。

 一方、人的な文脈は慣習的に形成されるもので、短期間で書き換えることは困難であり、経営の手段としては使いにくい。緑の組織では、コンテンツよりも文脈の力が圧倒的に強いので、コンテンツを書き換えるような変革の技が発達しにくい。

 もちろん、緑の組織の設計図にもコンテンツ部分はあり、その部分は書き換え可能だが、文脈がコンテンツよりも優先されるので、せっかくコンテンツを書き換えてもその伝達はないがしろにされ、諸事がコンテンツに従って動くかどうかは、結局、制御がききにくい文脈次第になりがちだ。