「ムダとムラとムリ」を徹底的に追放するトヨタ生産方式は、「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ」を実現するシステムである。大野は、『トヨタ生産方式』(ダイヤモンド社)を執筆した動機について、「量的拡大による生産性向上ではなく、厳しい低成長時代にも人間の努力と工夫によって、コスト・ダウンを達成できるという、一つの見本を示したかった」と述べているが、その根幹には、ものづくりは「売れるものを、必要とされる時に、必要数だけ生産する」ことに尽きるという信念がある。目先のコストと効率を追求してきた結果、先進国の製造業が弱体化しているなか、大野耐一のものづくり哲学について再考する。