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戦略論における産業構造派と再構築派
経営幹部が企業戦略について考える時、たいていいつも、まず自社の属する産業や事業環境を分析する。つづいて、競合するプレーヤーの強みと弱みを評価する。このような産業分析や競合分析を念頭に置きながら、競争優位を確立することでライバルを凌駕できる独自の戦略を決定する。
このような競争優位の獲得に向けて、たいていの企業が、プレミアム価格によってライバルとの差別化を図るか、低コストを追求するかのどちらかを選択する。
組織は、自社のバリュー・チェーンに従って組織全体の整合性を図り、その過程で、製造、マーケティング、人事に関する戦略が立案される。そして、これらの戦略に基づいて、財務目標が設定され、予算が配分される。
その根底にあるのは、戦略の選択肢は事業環境に制約されるという論理である。言い換えれば、産業構造によって戦略は決まる。この「産業構造派」のアプローチは、産業組織論[注1]の「SCPモデル」(structure-conduct-performance:構造-行動-成果)に端を発するもので、過去30年間、戦略の世界を支配してきた。
このモデルによれば、企業業績は企業行動に左右され、企業行動は、サプライヤーや顧客の数、あるいは参入障壁など産業構造の基本要因に左右される。すなわち、決定論的な世界観であり、そこには、さまざまな外的条件によって、これら外的条件を活用する判断が左右されるという因果関係が存在する。
しかし、ビジネスの歴史をざっと振り返ってみても、〈T型フォード〉から任天堂の〈Wii〉まで、戦略が産業構造を変えた例はたくさんある。我々は15年ほど前から、「ブルー・オーシャン戦略」[注2]と呼ばれる戦略論を展開しているが、これは、企業業績が必ずしも産業の競争環境によって決まるものではないという事実に基づいている。
ブルー・オーシャン戦略のフレームワークを用いることで、産業を再構築できるだけでなく、「まず産業構造があり、そして戦略がある」という順序を、企業が望むかたちでひっくり返すことができる。
ブルー・オーシャン戦略は、「内生的成長理論」[注3]と呼ばれる経済学の新派に原点がある。その核となるパラダイムは、個々のプレーヤーの考え方と行動が経済や業界の環境を規定するという前提に立っている。言い換えれば、戦略によって産業構造は変えられる。我々はこのアプローチを「再構築派」と呼ぶ。