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文化の違いを理解できるかは
ビジネスの成功を左右する
イスラエルの企業に勤めるアーロン(後述する他のマネジャーたちと同様に仮名)は、自社が買収したばかりの製造工場を統括するため、モスクワに着任した。彼は当初、すぐに馴染めるだろうと考えていた。テルアビブで育ったとはいえ、両親はロシア出身だ。そのためロシア文化に通じており、流暢なロシア語を話せる。イスラエルのチームの統括業務で目覚ましい成果を上げたこともあれば、カナダで大きな組織を率いた経験もある。ところが着任から半年経っても、彼はモスクワのチームを束ねるのに苦戦していた。彼のやり方にはどのような問題があったのだろうか。
文化的差異がビジネスの成否に与える影響について、筆者は16年にわたり研究を重ねるなかで、この手の問いに答えを出すのは容易ではないと思い至った。異文化マネジメントに関する研究や著述は豊富にあるが、微妙な文化的差異を浮き彫りにした概念図を提示できていないことが多い。すなわち、国境をまたぎ、自国出身者以外と一緒に仕事をするマネジャーにとって、実際に役立つものを導き出せていないのだ。その結果、ありきたりの説に頼り、異文化出身者をたった1つか2つの側面から固定観念に当てはめがちだ。たとえば「日本人は序列を重んじる」とか、「フランス人のコミュニケーションは微妙でとらえにくい」といった具合である。
こうした理解では、「日本人は常にトップダウン方式で意思決定を下す」や「否定的なフィードバックを与える時、フランス人は遠回しに言う」など、短絡的な思考に陥りやすい。そしてフランス人の同僚からあからさまに欠点を批判されたり、意思決定の前に下位層の賛同まで得ようとする日本人顧客を目の当たりにしたりして、驚くはめに遭う。