あらゆるものがネットワークにつながることで、ものづくりも、物流も、顧客サービスも根本から変わろうとしている。この大きな変化をビジネスチャンスにつなげるには、日本の企業はまず何をすべきか。アクセンチュアとマイクロソフトが出資した戦略的合弁会社であり、世界中で先端ITソリューションを提供しているアバナードのシニアディレクター、山中理惠氏に聞いた。
デジタルの力を
味方につける戦略とは

事業開発
シニアディレクター
山中理惠氏
「IoTやビッグデータが、ほぼすべての企業にとって意味を持つ時代に突入しました」とアバナードの山中理惠氏は切り出す。
センサー、ウェアラブル・デバイス、カメラなど、数千億個の情報発生源がクラウドにつながり、従来ならデータとして取れなかった情報が手に入る。企業は、自社製品が世界のどのようなところで購入され、使われ、どう評価されているかなどを正確に把握することが可能になった。
変化のポイントはテクノロジーだ。デジタル・データの力をビジネスに最大限に生かすためには、すべての企業がデジタル・テクノロジーと正面から向き合わなければならない。
「幸い、ものづくりやお客さま第一にこだわってきた日本企業は、デジタル・テクノロジーとの親和性が高いのです」と山中氏は言う。
日本の製造業は、現場のデータをできるだけ緻密に収集するところで苦労しながら、生産性を上げ、不良率を減らしてきた。たとえば、ビデオカメラ撮影をして導線分析をするなどは、その一例と言えよう。さらに、IoTを用いることで、リアルタイムなデータ収集の問題を、大きく前進させられる。従来以上に多様な角度から仮説を立て、短時間で検証することも可能になる。
「ただし、日本企業が注意すべきは、部分最適に陥らないようにすることです。デジタル化は、製造、物流、販売、アフターサポートまで、全プロセスを包括してこそ力を発揮します。海外の消費者がもたらした発見を日本の工場にすばやくフィードバックするなど、グローバル展開も必須です」と山中氏。
そこで必要となるのが、「デジタル化戦略」である。
「大きなエコシステムの中で、データ収集からフィードバックまで包括する仕組みが必要です。将来まで俯瞰したうえで、企業全体のデジタル化戦略を立案し、実行するのが急務です」と山中氏は強調する。