三つのアプローチを網羅し
「全体最適」を目指す
「デジタル化戦略」を考えるのは、多くの企業にとって初めての経験だろう。
山中氏は、実効性の高いデジタル化戦略立案においては、「デジタル・カスタマー」「デジタル・ワークプレイス」「デジタル・トランスフォーメーション」という三つのアプローチを意識するとよい、とアドバイスする(図表)。
「デジタル・カスタマー」とは、すべての販売チャネルを統合するオムニチャネルによる、デジタル・マーケティング、デジタル・セールス、デジタルサービスの包括的な取り組みを通して、これまでになかったカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を消費者にもたらし、顧客価値を最大化するということである。
「デジタル・ワークプレイス」は、ソーシャル、モバイル、クラウドとアナリティクスを組み合わせ、組織や物理的な場所の違いを超え、労働力の最適化や生産性の向上、コスト削減を通して、働き方そのもののイノベーションを起こすことを目指す、競争優位の源泉となる、コミュニケーション基盤である。
そして「デジタル・トランスフォーメーション」こそは、デジタル化戦略の根幹と言ってもいい。
デジタル・データの量は膨大であり、社員が社内サーバを使って手作業で処理することは不可能だ。それでは、何をクラウドに上げ、何をアウトソーシングし、何をオンプレミスに残すのか。デジタル化はどこから始めて、どの優先順位で展開していくのか。企業の経営戦略に沿って、移行計画を立てておかなければならない。
「この三つの領域を網羅し、つなげて考えることが大切です。三つのアプローチから考えることで、より包括的なデジタル化戦略を立てることができるのです」と山中氏は言う。